本研究では、基板上に成膜される薄膜の形態が島状(不連続)から連続膜へと変化するタイミングを正確に捉えることのできる新たな超音波センサの開発を目的としている。このセンサは薄膜を成膜される基板の裏側に設置した圧電体を共振させ、共振する圧電体が周囲に作り出す電場が、基板上に成膜される金属薄膜によって影響を受けることを原理とするものである。基板の裏側から非接触で薄膜の形態を把握することのできる、独創的なセンサである。 今年度は前年度にひきつづき、開発したセンサが適用可能な条件を調べた。異なる電気抵抗率のシリコン基板を用いた実験を行い、基板の電気抵抗率が圧電体の共振に与える影響、薄膜形態変化の測定結果に与える影響を詳細に調査した。結果として、測定に使用する圧電体の共振モードを変えることで、電気抵抗率の低い基板であっても連続膜の形成を検出できることが分かった。この結果を説明するために、圧電体と基板、薄膜で構成される実験系を等価回路を用い表現し、解析を試みた。結果として、基板の電気抵抗率が薄膜形態変化の測定に与える影響を説明することに成功し、開発したセンサの動作原理を明確にすることができた。また、昨年度に引き続き、大気中の水素検出をおこなう水素センサの試験を行った。本研究で開発した超音波センサを用いてPd水素反応膜を作成し、水素に対する応答性を測定した。開発した超音波センサを使って水素応答性を測定したところ、応答性が十分には観測できなかった。一方で、電気抵抗を直接計測すると水素への応答性を測定することができた。このことは、開発したセンサを用いることで、水素への応答性が高いPd膜を作成できる可能性を示唆している。
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