本研究では、球内の光伝搬モードの一つであるWGMの共振状態をモニタリングすることで、球の形態情報の測定を目指すものである。具体的には直径数100 μmの誘電体球に対して最終的に10 nmの精度で直径および真球からの形状偏差を計測評価することを目指している。 テーパファイバを用いてWGM共振を測定する際、ファイバと球の距離に応じて共振波長が0.1 nm以下のオーダでシフトする。数値解析によって、共振波長シフトの原因は球内電場分布の乱れに起因することがわかった。また、この影響が及ぶファイバー球距離は、テーパファイバのエバネッセント光領域と関連が強いことを明らかにした。この知見から今後テーパファイバの直径を最適する。 次に、半径モードについて判定方法を提案した。球は3次元共振器であるため、そのモード体積が球の半径に対して非線形に変化する。半径モードは光伝搬が半径方向に広がりを持つモードであるため、これが異なるとモード体積が特徴的に変化する。実際、比較的広い範囲でWGM共振波長を測定し、モード体積を測定することで、半径モード番号を特定することができ、マイクロ球の測定不確かさが1μm程度改善できた。 最後に、現実のマイクロ球は真球ではなく形状歪みを持つ。理論は真球をベースとしているため、理論値と実験値が異なる可能性がある。そこで、真球ではない回転楕円体モデルに対する分散式(形状と共振波長の関係式)を解析的に求めた。具体的には回転楕円体座標系を用いたマクスウェル方程式を、マイクロ球内の電場が最大(共振状態)となる境界条件を与えることで、回転楕円体に対する分散式を導出することができた。今後、無限級数の形式となっており、単純に解くことは困難であるため、収束解を得られる条件などを導入し、この方程式を解くことで回転楕円体に対する共振波長を解析的に求めることができる。
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