本年度はまず、表面プラズモン共鳴によって分子間化学的相互作用の動的変化をより効率的にとらえるために入射光の角度分布のレンジを広げ、検出域の下限が臨界角付近にシフトするよう光路全体の設計変更を行った。具体的には光軸中心が45度入射時において集光角度約50度を達成する長作動対物レンズを導入し、レンズとプラズモン共鳴が生じる金属薄膜までの距離およびプリズムと金属薄膜の間に介在するマッチングオイルの膜厚をともに可変できる系を構築し、それらを変数として金属薄膜上の有効スポット径を考慮した上で最適な光軸中心の入射角の算出・設定を行った。またプラズモン共鳴の効率およびバイオセンサとしてアミンカップリングを利用するために金属薄膜として5 nmのチタン層の上に47 nm(±10%誤差)の金を蒸着したものを用いたところ、本系においてプラズモン共鳴に伴う特異的な角度における暗線の確認およびp偏光光でのみ反射光光量の定量的な減衰を認めた。また微小界面間力の測定においてはワイヤー放電加工によってマイクロカンチレバーを作製し、分解能0.1 nmの静電容量式変位計およびピエゾアクチュエーターによる変位制御によって金薄膜とカンチレバー先端との界面間力が測定できる系を構築した。これらの系を用いて、生体関節表層に発現している分泌タンパク質群において化学的相互作用とそれらの時系列変化に伴う力学相互作用(界面間に発生する粘弾性に関係する力)に関するデーターベースの構築に取り組んでいる。
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