研究課題/領域番号 |
15H05512
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
萩原 将也 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (00705056)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 自律形成制御 / パターン形成 / 培養環境 / 三次元培養 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究において、細胞を特定の集団形状に制御した状態から培養を開始することで、固有のパターン形成を有することを実験および反応拡散モデルによるシミュレーションにおいて立証した。しかしシミュレーション内には、化学的な細胞への相互作用しか加味されておらず、細胞同士の物理的な相互作用がどの程度パターン形成へと影響を及ぼしているのか不明であった。 そこで当該年度においては、直接接触していない2つの細胞集団同士がパターン形成に影響を及ぼすかを解析した。集団間の形状や距離をフォトリソグラフィーにより制御することで、物理的な要因を除くことができる。実験では昨年度同様気管支上皮細胞を用い、フォトリソグラフィーを応用して直接接触しない2集団の細胞位置制御を行った。すると各集団から延びてきた細胞はお互いが接触しない方向へと避ける方向へと進行することが確認できた。またこれにより生じるパターンにおいて、複数の実験結果およびシミュレーションが一致し、化学的な相互作用ので生成されるパターンへの影響力が物理的な相互作用よりも大きいことが明らかになった。 さらに本年度では、これまで行っている2次元での細胞実験をより生体に近い三次元実験系へと展開するため、三次元培養プラットフォームの構築を行った。2種類のハイドロゲルを組み合わせ、細胞の足場環境を作ることにより、三次元培養中においてもゲルを持ち上げ回転することが可能となり、多面からの観察を可能にした。これにより、明視野においても三次元形状構造の把握が可能となり、さらにレーザー顕微鏡と組み合わせることにより、低倍レンズの大域観察ながらも高解像度なイメージングを達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では化学的な相互作用がもたらすパターン形成への影響を解析し、その影響力の大きさを示した。これにより、細胞培養において特定分子の時空間濃度を制御することにより、細胞が自律的に形成するパターンを恣意的に誘導できることを示唆しており、本研究目的である細胞組織の自律形成制御へと大きく進展している。 さらに本年度では2次元のみならず、本研究成果をより生体環境に近い3次元へと展開するための培養プラットフォームを用いて、大域高解像イメージングを同時に達成しており、三次元培養のボトルネックである計測系の問題を解決する可能性を有していることから、本研究課題の枠組みを超えた成果を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
既に作製済みのマイクロ流体チップを用いて、特定タンパク質の濃度勾配を制御することとにより気管支上皮細胞の集団のパターン形成制御を行う。これまでに精査したシミュレーションを用いて、特定形状へと細胞組織が形成するための初期条件および外部環境を逆問題を解くことにより求める。さらに上記で算出した培養環境を、マイクロ流体チップおよびフォトリソグラフィーを用いた微細加工技術により培養環境を制御し、これにより細胞組織が任意形状へと自律形成させるための設計・制御理論を確立することを目指す。 さらにこれまでに構築した三次元培養プラットフォームを用いることで、これまで行ってきた2次元の実験系を3次元展開する基盤を確立することを目指す。
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