研究課題/領域番号 |
15H05513
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30548681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / マイクロファイバ / 機能性材料 / ハイドロゲル / 自己組織化 |
研究実績の概要 |
多様な機能性材料が3次元的に配置された複合ハイドロゲル構造の構築のために、マイクロゲルファイバを自己折り畳みすることで3次元構造を構築する方法を提案し実現することが本研究提案の目的である。具体的にはマイクロ流体デバイス利用することで、アルギン酸ゲルファイバー内に空間的に膨潤・収縮するゲル材料をパターニングする。これらのパターンに依存してファイバーが自発的に折り畳まれることにより、3次元構造の形成を狙う。 H27年度はマイクロゲルファイバ内への機能性材料のパターニングに取り組んだ。まず、ファイバ作成のために用いるマイクロ流体デバイス内部に、層流を形成することによって断面方向への機能性材料のパターニング技術を開発した。それにより、2重同軸ファイバ、2層ファイバ、2軸2重ファイバなど様々なマイクロファイバの形成に成功した。それらを螺旋状に自己折り畳みさせることで、機能性材料を含有する3次元構造の構築法を確立した。また、マイクロファイバ内部へ封入可能な機能性素材の検討も行った。当初より予定していたpNIPAMの誘導体であるpNIPAM-co-AAcのファイバ形状への形成に成功し、温度及びpHの変化によるファイバの動的な形状変化を確認した。さらに、ファイバの直径を変化させることにより、温度及びpHの刺激に対して、ファイバの形状変化速度が異なることも確認し、今後の機能性材料のパターニングのための設計指針を得た。これら2つの成果に関して、国内学術論文を1報、国際学会に1件、国内学会に2件の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、H27年度においてはゲルファイバー内へ封入する機能性材料の探索と条件検討までを行う予定であった。しかし、当該年度中にpNIPAM-co-AAcによるマイクロファイバの作製に成功し、そのマクロな形状の変化についての結果も得られ始めた。そのために、H28年度に購入を計画していたマイクロスコープ用の画像解析ソフトを前倒しにより購入し、マクロなファイバの形状変形の評価に取り掛かっている。そのため、当初の計画以上に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、(1)異種材料のファイバ内パターン形成、(2)自己折り畳みによる3次元構造構築の2つの課題に取り組む。
(1)H28年度は膨潤・収縮するゲルの候補としてH27年度に見出したpNIPAM-co-AAcを利用し、温度やpHなどにより駆動するマイクロファイバをさらに機能化する。具体的には、self-foldingのため機能性材料のファイバ内へのパターニングを行う。同時に応用展開のための準備として、種々の機能性材料をファイバ内へ封入するたえの技術開発を行う。具体的には、作製時に温度制御が必要なゲル(コラーゲンなど)を用いる場合、大型の冷蔵庫内で実験セットアップを組み立て、その中でファイバ作業を行う。また、シリンジを制御してファイバを動かす技術にも取り組む。これらの技術を元に、膨潤・収縮するゲルをアルギン酸ゲル内にパターン形成する。特に膨潤ゲルのパターンの幅や中心からの偏心、またファイバ直径などがself-foldingに与える影響を検討する。
(2)ゲルファイバを自己折り畳みさせることにより、3次元構造を構築するための条件検討を行う。まず最初に、形状情報の元となる膨潤・収縮ゲルの位置を替えることにより、スプリング、チューブ、バンドルなどといった基礎的な3次元構造の構築を実現する。評価方法としては、膨潤・収縮によるfoldingの角度やファイバ表面の物理的相互作用を変化させるとのにより、形成される3次元構造がどのように影響されるかを、デジタルマイクロスコープを利用した画像解析から評価を行う。
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