大気圧プラズマの一種であるストリーマ放電中では、電界で加速された電子が大気中の分子と衝突し、分子を電離・解離・励起する。その結果、ストリーマ放電中では、イオン・解離種・励起種などの「活性種」が効率よく生成される。これら活性種は非常に反応性が高いため、環境・エネルギ・医療など幅広い分野への応用が期待されている。しかし、活性種の生成機構には未解明な部分が多い。この一因は、活性種の生成源である電子が時空間的にどういった挙動を示すのか、その詳細が全く測定できていない点にある。活性種の生成源である電子の詳細計測に基づいて活性種の生成機構を解明することができれば、活性種の生成量と種類が高度に制御可能となる。そのため、活性種応用技術の最適化や安全性向上が達成でき、実用化は大きく前進する。 こうした背景のもと、本研究では、ストリーマ内の2次元電子密度分布がシングルショットで撮影できる高時間分解能・高感度型センサを独自に開発した。これにより、ストリーマ内の電子密度を~1nsの時間分解能と~10^20m^-3の測定感度で可視化することに成功し、いくつかの活性種について、その生成・消滅機構を明らかにした。さらに、今回得られた電子密度の時空間的挙動が再現できるよう、既存の電磁流体シミュレーションモデルを改良することで、これまでの数値解析においてはあまり考慮されることの無かった活性種が、実際に生成されておりその活性種がストリーマの時空間発展に大きな影響を与えていることを示すなど、シミュレーションモデルの改良と精緻化を行うこともできた。
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