研究課題/領域番号 |
15H05518
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
長谷川 崇 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (10564742)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気・電子材料 / 磁気記録 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
当初の研究実施計画に従い、本年度は以下の3項目を実施した。 1.強磁性‐反強磁性相転移を生じる薄膜材料の開発: 次世代の高密度磁気記録媒体の実現のためには、高い磁化と磁気異方性を有し、かつイオン注入でナノ構造を誘起可能な新規薄膜材料の開発が必要となる。本研究ではこれまでに、L10型FePt-X (X=Mn,Ru,Rh,Ir)薄膜において所望の磁気特性が得られることを明らかにし、次いで本年度は代替材料として、極めて高い磁化、磁気異方性、交換定数を有する正方晶FeCo-X薄膜を開発した。今後は記録媒体として必須の磁気特性(磁化、磁気異方性)の向上と、反強磁性相の室温での安定化(交換定数の向上)の観点から、適切な第三元素Xを探索する。 2.イオン注入による反強磁性ナノ構造の形成: 正方晶FeCo-X薄膜では、あるX元素において、膜厚が3nm未満でも非磁性相が室温で安定に存在することが分かった。今後は、本材料に対するイオン注入効果を調べ、ナノ構造の形成能を評価する。本研究ではこれまでに、 (001)面が膜面に対して垂直方向に配向したL10型FePt薄膜では、注入イオンの飛程がモンテカルロ法を用いる計算コード(SRIM)の結果とは大きく異なることを明らかにした。正方晶FeCo-Xも同様に、(001)面が膜面に対して垂直方向に配向した膜構造であるので、注入イオンの飛程はSRIM計算結果と異なる可能性が高く、詳細に調べる必要がある。 3.反強磁性相と強磁性相との間に働く磁気的相互作用の解明: 反強磁性を示すL10型(FeMn)Pt薄膜並びにL10型Fe(PtRh)薄膜と、強磁性を示す正方晶FeCo薄膜の層間には、交換バイアスは検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当事業の研究実施計画では、以下の3項目の実施を予定している。 1.強磁性‐反強磁性相転移を生じる薄膜材料の開発 2.イオン注入による反強磁性ナノ構造の形成 3.反強磁性相と強磁性相との間に働く磁気的相互作用の解明 当初の計画に従い、本年度は上記1、2、3を実施し、論文発表8件(査読有7件、査読無1件)、学会発表15件(国外4件、国内11件)を行ったことから、おおむね計画通りに進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に従い、今後は以下の項目を実施する。なお、本研究の一部は学生の卒業論文・修士論文テーマとして実施する。 1.強磁性‐反強磁性相転移を生じる薄膜材料の開発: 理論計算を併用した材料開発を行う。本研究ではこれまでに、L10型FePt-X (X=Mn,Ru,Rh,Ir)薄膜において所望の磁気特性を得た。次いで代替材料として、極めて高い磁化、磁気異方性、交換定数を有する正方晶FeCo薄膜を開発した。今後は、記録媒体として必須の磁気特性(磁化、磁気異方性)の向上と、反強磁性相の室温での安定化(交換定数の向上)の観点から、正方晶FeCo-X薄膜の開発を進める。 2.イオン注入による反強磁性ナノ構造の形成: 強磁性‐反強磁性相転移を生じる正方晶FeCo-Xに対するイオン注入効果を調べ、ナノ構造の形成能を評価する。正方晶FeCo-X薄膜では、あるX元素において、膜厚が3nm未満でも非磁性相が室温で安定に存在することが分かった。今後は、この材料への注入イオンの膜中での軌跡、熱処理による規則化メカニズム等を解明し、3nm未満のナノ構造形成のための膜構成、イオン注入条件、熱処理条件等を明らかにする。 3.反強磁性相と強磁性相との間に働く磁気的相互作用の解明: 実験と理論の両面から、反強磁性相が強磁性ドットの磁化反転プロセスや磁気特性に与える影響等を詳細に調べる。実験では走査型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、磁気力顕微鏡、マイクロカー効果顕微鏡等を用いる。
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