研究課題/領域番号 |
15H05522
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村上 勝久 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20403123)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グラフェン / 真空ナノエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
金属蒸気触媒CVDによる絶縁基板上へのグラフェン直接合成手法の確立を目的として、(1)グラフェン初期成長過程の解析、(2)水素導入の効果、(3)基板種依存性の3項目について調査を実施した。グラフェン初期成長過程の解析から、最初にグラフェン核が発生し、合成時間とともにグラフェン核が成長しやがてグラフェン核がつながっていく様子が観察され、金属蒸気を触媒としたCVD合成においても、金属触媒基板上でのCVD合成と同様の成長様式であることが分かった。また、合成時に水素を導入すると、成長速度が低下しグラフェンの結晶性が向上することが分かった。基板種依存性から、合成に用いる基板の表面粗さが初期に発生するグラフェン核密度に依存することが分かった。以上の結果から、金属蒸気触媒CVDにおいて、基板の表面粗さを小さくし発生する核密度を減少させ、水素導入によりグラフェン核の成長速度を抑制し、グラフェンドメインを大きくすることで結晶性を向上できることが分かった。 更に計画を前倒しし、本手法で合成したグラフェンを上部電極に用いたGraphene/Oxide/Semiconductor構造の平面型電子放出デバイスを試作し、電子放出特性の評価を行った。その結果、電子放出デバイスとして動作することを実証した。また、従来の上部電極に金属を用いたMetal/Oxide/Semiconductor構造の電子放出デバイスと比較して、電子放出効率、放射電流密度ともに100倍以上向上することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画で次年度に実施する予定であったGraphene/Oxide/Semiconductor構造の平面型電子放出デバイスの動作実証および特性評価まで実施し、グラフェンを用いた新しいデバイス応用を提案することができ、本研究課題は当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェン合成に関しては、更なる結晶性の向上と産業応用への適用を考慮して、新規触媒金属の探索とグラフェン合成の低温化の2項目を中心に研究を推進する予定である。 平面型電子放出デバイスに関しては、更なる電子放出特性の向上を目的として、デバイス構造の最適化およびグラフェン電極へのアルカリ金属ドーピングによる低仕事関数化の2項目を中心に研究を推進する予定である。
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