本研究では、これまで距離分解能が乏しいとされていたTime-of-Flight距離撮像素子を、新たなTOF距離計測方式と高速な電荷変調素子により、マイクロメータ距離分解能まで向上させることを目的としている。TOF距離イメージセンサの距離分解能は、理想的にはフォトンショットノイズによって決定されるが、時間分解能にしてピコ秒を上回る100umを超える距離分解能の領域においては、クロックのゆらぎであるジッタが距離分解能を律速する。これを解決するための手法として考案した参照光サンプリング法では、参照光は既知の距離に固定面を計測し、これを主画素アレイの結果と差分を取ることで、共通な揺らぎ成分(クロック生成部やレーザのドライバ回路のジッタ)を除去する。 本年度は、参照光サンプリング法を適用した3タップTOF距離撮像イメージセンサのより詳細な解析を行った。参照光サンプリング法を適用することで、距離分解能が180umから64umまで向上し、時間分解能にして430fsが得られた。さらに、列方向の距離分解能に大きな相関があり、ゲートクロックのジッタが距離分解能を律速しており、またランダムテレグラフノイズ(RTN)に類似したジッタが見られることを明らかにした。これらのジッタ成分を定量的に分析するために、提案するインパルス駆動型の距離分解能のモデル式を構築した。ピコ秒レーザの時間応答をガウス関数でモデル化し、ジッタ成分を考慮して理論式を導くことで、上記のモデル式が実験結果と良く一致することを明らかにした。 さらに、この評価系を用いて、3次元スキャン画像の取得を試み、複数方向からの3次元画像を取得し、これらの位置合わせを行い合成を行うことで、良好な3次元データの取得に成功した。
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