研究実績の概要 |
従来、電磁界研究分野における一般認識として「周波数が固定された場合の各材料の振る舞いは常に一定」と考えられてきた。すなわち、同一周波数上の任意電波に対してのみ散乱または吸収特性を変化させて抽出することは不可能と考えられてきた。これに対して、近年研究代表者らによって開発された新規電磁特性「波形選択性」を有する材料(波形選択メタサーフェス:Waveform-selective metasurface)は同一周波数でも波形、すわなちパルス幅に応じて吸収特性を変化させることを可能にした(参考文献:Wakatsuchi et al., Phys. Rev. Lett., 111, 245501, 2013;Wakatsuchi et al., Sci. Rep., 5, 9639, 2015)。これを受けて、本研究では波形選択性の基礎特性を向上・拡張することを目標としている。また、最終的には動的に制御できる高度な波形選択性を有する無線通信システムの実現を目指す。 当初研究計画は2年目となる28年度までにほぼ全て完了し、追加項目についても実施した。最終年度となる29年度ではさらに波形選択性の応用可能性を広げるべく新たな課題について着手した。ここで、従来の波形選択性は周波数領域だけではなく、時間領域においても電磁応答を操作することを可能にした。新規課題ではさらに時間領域応答を異なる物理現象と結合させる手法について考案した。また、本年度はこれまでの研究成果を国際会議や学術論文誌等で発表した(ただし、一部成果は査読中)。
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