STDMA(Synchronous Time Division Multiple Access)スイッチ群を介したバイラテラル制御系の研究に関して以下の知見が得られた: 1) スレーブロボットが接触する物体の剛性推定値を用いた適応制御器が、通信遅延の補償に有効であることが前年度までの研究で明らかになっている。しかしながら、通信遅延による剛性推定の遅れが制御性能を劣化させることが分かった。そこで、スレーブロボットと接触物体の距離を計測する外界センサを用いることで推定遅れを補償した。距離を計測することで、物体との接触をマスタ側で予測し、マスタ側で用いる剛性推定値の収束性を高めるというものである。 2) ロボットが2つ以上の能動関節を持つ場合、制御性能は制御器を設計する座標系に依存することが明らかになった。例えば、2リンクマニピュレータを用いたバイラテラル制御の場合、接触物体の接線方向をx軸、垂線方向をy軸とする座標系(物体座標系)で制御器を設計すると設計変数を大幅に減らすことができる。 3) STDMAスイッチ群を介したフィードバック制御系の制御性能は設計者が決めるスイッチングパターンに依存するため、制御目標とネットワークトポロジに応じてスイッチングパターンを最適化する必要があることが分かった。通信方式には非同期方式と同期方式があるが、STDMAは同期方式の一種である。一方で、送りたいときにデータを送信する非同期方式では、スイッチングパターンを設計する必要がない反面、遅延やゆらぎが大きい。
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