今後の研究の推進方策 |
昨年度までの現地観測によって、懸濁物に存在する炭素(C)、窒素(N)、リン(P)含量については判明している。その結果、霞ヶ浦流入河川の中では最大の桜川では、懸濁物中のC:P、あるいはN:P比が割合小さいが、河川から湖に流入し、流下するにつれてC:P比、N:P比が上昇する傾向がある。つまり、C、Nに比べてPの減少量が大きい可能性がある。これは存在する植物プランクトンや、バクテリアのバイオマスの中に存在するリン含有量が流下と共に異なっているためである。また、元素の比の変化によって植物プランクトン、バクテリアの細胞内に、異なるリン化合物が存在する可能性もある。そこで、どのようなリンがそのC:Pおよび、N:P比に影響を与えているか解析を行う。これは河川から流入したPがどのような形態へと変化するのかをも予測するものである。 一つ目のアプローチは、Pの化合物分析である。以前開発したカートリッジフィルターでの懸濁態リンの分析を用いる.つまり,0.45μmのカートリッジフィルターを用いて濾過を行い,その中に含まれている化合物を核磁気共鳴装置で分析することで,どのようなリン化合物が流下と共に変化しているかを解析する。二つ目のアプローチは、粒径別のリン含有量の分析である。懸濁物中に含まれている物質は、粒径別に概ね異なる.たとえば,0.7~2.0μmの間にはシネココッカス類が多く含まれている.粒径別の分画を行うことで,どのような物質がC,N,Pの存在比を変化させるのかを明らかにする.最後に、それぞれの粒径画分等で、バクテリアの含有量を明らかにする。これはDAPI染色を用いてバクテリアの計数を測定するアプローチを用い,バクテリアの存在量によるリン化合物の変化を明らかにする. 以上3点の手法を行うことで、どのような画分のリンが、どのようなファクターで変動し、富栄養化に寄与しているかを明確化する。
|