研究実績の概要 |
[A]TEM-EDXによる膜面・膜内部バイオフィルム構成物質のマッピング:実験室規模MBRから採取した目詰まり後の膜,物理洗浄した膜,化学洗浄した膜,未使用膜の4サンプルを樹脂包埋・薄片作製し,透過型電子顕微鏡・TEMを用いて観察を行った。その結果,膜内には目立った粒子は観察されなかった。EDXによる元素分析の結果, 目詰まりおよび洗浄後の膜のいずれも,未使用膜の元素組成と大きくな違いは見られなかった。 [B] 実下水処理施設におけるAHLの存在確認と同定:金沢市とタイ・バンコクの計6箇所の下水処理場およびパイロットMBRプラントから活性汚泥を採取し,フーリエ変換型質量分析装置(FT-MS)にてAHLの検出を行った。その結果,3O-C6-HSLは比較的広範囲に検出された一方で,C8-HSLは金沢市の処理場に特異的に検出された。C4-および3O-C6-HSLは,活性汚泥法による処理場では水相中には検出されず汚泥粒子中にのみ検出されたが,MBRでは水相からも検出された。これらのことより,多くの種類のAHLが存在することを明らかにした。 [C]バッチ培養によるAHLの添加実験:昨年度実施したバッチ培養試験から得た微生物群集構造をAHL添加ありなしで比較した結果,C8-HSLを添加した系ではVerrucomicrobia,Chloroflexiに属するOTUの割合が増加した。 [D] 実験室規模MBR におけるクオラムセンシングによる汚泥のバイオポリマー生産への影響:クオラムセンシングに伴う活性汚泥のバイオポリマー生成について明らかにするため,標準活性汚泥法を模した実験室規模SBRにおいて,クオラムセンシングの阻害剤であるバニリンを添加した系としない系で比較した結果, クオラムセンシングを阻害した系ではバイオポリマー中の多糖とタンパク含量が減少することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
実験室規模MBR におけるクオラムセンシングによる汚泥のバイオポリマー生産への影響について,実験室規模MBRにおいて,クオラムセンシングの阻害剤であるバニリンを添加した系としない系で,バルク汚泥および膜面付着汚泥のバイオポリマーを比較すると共に, TEMによる膜内観察,および次世代シーケンスによる微生物群集構造の解析より,クオラムセンシングがMBRにおける微生物群集構造とバイオポリマー生成,および膜ファウリングに与える影響を明らかにする。
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