本課題では,建築基準法が想定する地震入力レベルを超えるような地震動に対する鋼構造建物の倒壊性状を定量的に評価し,非倒壊をクライテリアとした設計技術を発展させることを目的として.前年度(平成28年度)までに,1.露出柱脚の大変形域載荷実験,2.根巻き柱脚の大変形域載荷実験,3.複合的な耐力劣化要因を考慮した倒壊解析,の3テーマについて実施している. 本年度(平成29年度)においてもそれらを引き続き検討しており,その研究実績の概要は以下のとおりである. 1.アンカーボルトセットの引張試験を前年度から引き続いて追加実施し,切削ねじ(ABM規格)の場合のねじ山せん断破壊時の耐力評価方法について検討した.また,アンカーボルトの曲げ引き抜き試験についても追加実施し,塑性変形能力に及ぼす要因(柱脚の水平移動ならびに繰返し曲げの影響)について検討した.2.根巻き柱脚の支圧破壊性状をより詳細に考察するために,支圧破壊部分のみを抽出した要素実験を追加実施した.さらに,前年度までの実験結果を踏まえて,塑性解析に基づいて耐力評価について検討した.3.柱・梁部材の局部座屈と柱脚の損傷を耐力劣化要因として考慮したパラメトリックな地震応答解析を追加実施し,各パラメータが倒壊性状に及ぼす影響について考察した.主な知見として,倒壊に至るまでに建物全体に吸収されるエネルギー量は,露出柱脚および根巻き柱脚で柱脚ヒンジとして設計された場合,柱ヒンジとして設計された場合と同等以上となることがわかった.
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