研究課題/領域番号 |
15H05538
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
葛 隆生 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60552411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 真空断熱材 |
研究実績の概要 |
①低熱伝導材料を用いて真空層を形成した真空断熱材の伝熱モデルの開発 昨年度開発した真空断熱材の伝熱モデルの検証を、設定した圧力下での伝熱量測定が可能な保護熱板法による伝熱量測定実験を行い、その結果と比較することにより実施した。結果として、同じ圧力下では、実験値の方が計算値よりも小さな値となった。また、設定した圧力まで低減することにより、十分な断熱性能が得られることを確認した。 ②真空断熱材の試作および有効熱伝導率測定 光透過型真空断熱材については、真空下の乾燥処理や真空封止時に開口部を広げるなどの検討を実施した後に、真空封止を行う試作試験を行い、その後の熱流計法の試験によって得られる熱伝導率の測定結果から、真空封止後の真空到達度が5Pa程度まで低下できることを確認した。また、下記③の試験に適用する薄型真空断熱材の検討・試作を行い、建築物に適用し得る、比較的簡易な方法で作成可能な、厚さ3㎜の真空断熱材を作成することができた。 ③真空断熱材の建築物への適用の検討および熱橋を考慮した断熱性能測定試験 ②で検討・試作した薄型真空断熱材について、建築物への適用を想定し、真空断熱材をつなぎ合わせた約1.8m×0.9mのモックアップを試作した。さらには、試作したモックアップについて、2つの恒温室により温度差を形成し、移動熱量を計測する校正熱箱法の試験を実施し、熱橋を含めたモックアップの全体の断熱性能を評価した。結果より、元の真空断熱材の平均の熱伝導率3.2mW/(mK)と比較した、熱橋も含めた見かけ上の熱伝導率は、1層で元の断熱材の熱伝導率の1.75倍、2層で1.44倍、3層で1.25倍となり、熱橋の部分に重ねて真空断熱材を貼り合わせることにより、熱橋を抑えられることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
真空断熱材の伝熱モデルの検証については、設定した圧力下での伝熱量測定が可能な保護熱板法による伝熱量測定実験を行うことで、実施できた。また、真空断熱材の建築物への適用の検討および熱橋を考慮した断熱性能測定試験についても、当初の予定通り建築物への適用方法を提案し、校正熱箱法による試験を実施することで、対応できたと考えらえれる。 光透過型の真空断熱材については上記保護熱板法による伝熱量測定実験により、設定した圧力下で十分な断熱性能が得られることを確認している。また、光透過型真空断熱材の試作については、真空包装機内の圧力を0.1Paまで低減させる試験や、真空層を複層とした試作について実施している。 以上により、研究内容については、概ね順調に実施できているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は試作した光透過型真空断熱材について、透過率や反射率の測定試験を行う。また、高性能化が可能な芯材の検討を行う。 建築物への適用については、屋外フィールドに実験小屋を設置し、従来の断熱とVIPを用いた断熱の施工を行い、VIPを適用した場合の施工の簡易性を確認した上で、冬期の暖房実験を行い、従来の断熱と比較した、VIPの適用による省エネルギー効果を実証する。
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