本研究課題では、第一原理計算を用いて革新的半導体材料探索を達成するために必要な、計算手法とその計算プログラムを構築することを目的としている。本年度では、主に次の6つに関する研究成果を得るに至った。 1. 半導体点欠陥計算の完全自動化を行い、欠陥の局所電子・原子構造を詳細に解析のために必要な様々なツール開発を行った。これにより、従来では不可能であった、点欠陥のハイスループット計算が実行可能となった。現在、本プログラムの一般公開に向けた整備を行っている。2. 2元系酸化物中の酸素空孔を対象に300個程度の網羅的な第一原理計算を実行し、その解析を行った。その結果、大部分の酸化物中で酸素空孔は深い準位を形成する一方で、BaOやTiO2等、伝導体がd電子の軌道で構成されているごく僅かな酸化物中でのみ浅い準位を形成することがわかった。3. ICSDデータベース中の既知物質を対象に、網羅的な第一原理計算を継続して行った。今年度は主に、誘電定数に関して数千の計算データを収集した。4. 昨年行った窒化亜鉛中の点欠陥に関する第一原理計算結果Physical Review Appliedに出版した。本研究成果は高く評価され、Editors' Suggestionに選抜された。5. 窒化スカンジウムを対象とした点欠陥計算をPhysical Review Appliedに出版した。6. 新規の太陽電池光吸収材料として注目されている窒化亜鉛スズ3元系を対象とした点欠陥計算を行い、論文原稿をPhysical Review Applied誌のLetterセクションに投稿した。
|