研究課題/領域番号 |
15H05542
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
丹羽 健 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40509030)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超高圧合成 / 窒化物 / 電子構造 / 磁性 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,遷移金属多窒化物の超高圧合成に取り組んだ.当初予定していたFe,Co,Ni,Cuの後期遷移金属に加えて,全体の結晶学的理解のためには前期側遷移金属の超高圧実験が不可欠と判断しV,Cr,Mnの窒化物合成実験にも取り組んだ.その中で,合成実験のみならずラマン装置の新設・最適化が必要となった.具体的には,既存のラマンでは青色光を励起源としていたが,合成試料の欠陥由来による蛍光も観測されたため,波長の離れた赤色光源を励起光にもつラマン装置の建設に取り組んだ.赤外光の検出効率が少し低くレーザー強度自身も弱かったため,データのS/Nが十分ではなかったが,今後,高出力のレーザーを用いることでより質の高いデータが得られると考えている.またあいちシンクロトロン光を積極的に利用したことで結晶構造の決定まで速やかに取り組むことができた.50 GPaを超える実験では試料のサイズがより小さくなるが,あいちシンクロトロン光データのS/Nがよかったため,わずかにでも合成されていればそれを足掛かりに実験手法を改良しより確かなデータを得ることに成功した. 前期側の遷移金属多窒化物の合成実験の結果,CrN2,VN2の合成に成功した.Mnに関しては70GPaまでの圧力範囲で多窒化物の確たる証拠は得られなかった.興味深いことに,合成に成功した前期遷移金属の多窒化物は合成圧力が50 GPaを超える圧力領域にも関わらず,常圧下に回収することができた.これは高圧下で形成された窒素‐窒素間の単結合が非常に強固で多窒化物の準安定性に重要な影響を与えていることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成実験が当初予定していたより高い圧力範囲まで必要であったこと,後期側以外にも全体の理解のためには前期側遷移金属の実験が必要であったことで時間を要したが,当初計画していた以上の結果が得られた.次年度はこの結果を基づく考察から多窒化物の物質科学について結晶化学的に考察する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は研究計画最終年度であるため,研究成果全体の総括をおこなう.一部では再現性の確認も必要であるため引き続き実験をおこなう.当初予定していた後期側遷移金属(Fe,Co,Ni,Cu)の多窒化物に関しては投稿論文としてまとめ発表する.そのためには第一原理計算など実験以外による結果の検証も行う予定である.また,当初計画にはなかった前期側遷移金属の多窒化物合成の結果に関しても興味深い知見が得られたので投稿論文としてまとめる予定である.
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