研究実績の概要 |
ナノポーラス金属上での大腸菌・ブドウ球菌等の活性を調べるための基本的な環境構築を行った。金属スパッタリングの条件を検討し、細菌培養に適した50ミリ四方のナノポーラス金属を作製できた。これを用いて、JIS Z 2801に準じる抗菌性試験を実施した。菌液調製のために、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門から分譲された大腸菌 (Escherichia coli, NBRC 3301) および表皮ブドウ球菌 (S. epidermidis, NBRC 100911) の菌株を用いた。ナノポーラス金および平滑金の試料上に、試験菌液を滴下し、その上にフィルムをかぶせた。この試験菌液を接種した試料を308 Kで24時間培養した。試料表面上から液体培地を用いて菌を洗い出した液から10倍希釈系列希釈液を作製し、寒天平板混釈法で生菌数を測定した。その結果、平滑な金の表面上での生菌数は対照試料であるポリエチレンフィルムと大差なかったのに対し、ナノポーラス金の表面上での生菌数は大きく減少した。特に、孔径が小さいナノポーラス金のほうが顕著に減少した。これらの傾向は表皮ブドウ球菌でも同様であった。これらのことから、ナノポーラス金属が通常のバルク金にはない抗菌作用を持ち、細菌の生命活動を抑制することが明らかとなった。別途、蛍光顕微鏡やインキュベータ等を導入するとともに、走査プローブ顕微鏡 による液中その場観察条件を整備した。
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