前年度に引き続き、フィルム密着法に準じてナノポーラス金および平滑金上に大腸菌K-12を滴下し、24時間後の所与の相対湿度での生菌数を調べた。相対湿度が約60%のときにナノポーラス金の抗菌活性が平滑金と比べて大きくなった。一方で、相対湿度が約15%および90%で培養した場合のナノポーラス金の抗菌活性は平滑金の場合と大差なかった。 相対湿度約15%での培養後では乾燥により菌液がほとんどなくなっており、ナノポーラス金・平滑金のいずれにおいても生菌数が少なくなっていた。相対湿度が低い場合には(基板の影響でなく)乾燥によってナノポーラス金・平滑金のいずれにおいても菌が死滅したことが示唆される。 また、相対湿度約90%での培養後は菌液が培養開始後とほぼ同じ量だけ残っており、相対湿度約60%での培養後に残っていた菌液の量は蒸発によりある程度減少していた。湿度が高く菌液が十分にある場合、細菌の基板への接触頻度が低く、それに対し、中間程度の湿度で菌液がある程度減少すると、細菌の基板への接触頻度が高くなると考えられる。中間程度の湿度でナノポーラス金の抗菌活性が高まったことは、ナノポーラス金の抗菌作用には細菌とナノポーラス金基板の直接接触が必要であることを意味している。これは従来の金属の抗菌機構、すなわち金属イオンや活性酸素等の拡散種による抗菌と大きく異なり、ナノポーラス金独自の抗菌機構があることを強く示唆する。 その他、走査プローブ顕微鏡でのその場観察等の条件も昨年度に引き続き整え、大腸菌の細胞膜の弾性率評価も開始した。
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