本年度は、以下の2項目について研究を行なった。
(1)室温高圧合成により生じたと考えられる、カルコパイライト構造のカチオン原子が入れ替わった構造の電子状態を、上手く模擬できると考えられる計算コードを使った電子状態計算を行なった。その結果、カチオン原子の入れ替わりにより、P型の熱電材料としては望ましいバンド構造を持っていないが、上手く電子ドープができればN型の熱電材料として良好な電気的特性を示すようなバンド構造を持っている事がわかった。また、本年度得られた結果と、これまで得られた実験的結果を様々な側面から突合せ、追加実験等を行い考察を行なった。
(2)室温以上でモジュールとして使用した場合に重要となる、カルコパイライト構造化合物の高温安定性について詳細に調べた。具体的には、昇温過程での不純物相の析出や、それに伴い生じる結晶構造の変化、また、ヒートサイクルが熱電特性に与える影響についても確認した。その結果、ヒートサイクルにより電気的特性が明らかに変化することがわかった。
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