研究課題/領域番号 |
15H05559
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今村 太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30371115)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数値流体力学 / 直交格子 / 圧縮性流体力学 / 航空機設計 |
研究実績の概要 |
平成29年度は主に以下に述べる4つの事柄に取り組んだ。 1)流体解析プログラムのMPIによる並列化は平成28年度に完成していたが、格子生成を含む前処理部分の計算は並列化できていなかった。中でも、乱流計算で必要となる物体壁面からの距離計算が特に三次元解析において計算時間の観点でボトルネックになることが明らかになったことから、MPIによる並列化に取り組んだ。この結果、3億点弱の格子が研究室内のワークステーションを用いて生成できるようになった。 2)高レイノルズ数流れの実機複雑形状周り流れの解析を通じて、これまで構築してきたプログラムの有用性を示した。また、階層型直交格子に適用する境界条件として埋め込み境界法を採用していたが、より詳細な比較検証のため、カットセルベースの手法についても検討を開始した結果、複数の課題を抽出することができた。 3)開発してきたプログラム名をUTCartと命名し、基盤となるUTCartを用いた発展研究に取り組み始めた。具体的には、Adjoint法を用いた形状最適化問題、航空機主翼の静的空弾問題、二次元高揚力装置周りの空力解析、研究室で実施している風洞試験のサポート計算、である。数値流体力学を専門としない学生にも積極的な利用を促すことができた。 4)UTCartの教育利用や社会貢献への展開にも取り組んでいる。数値計算は計算機内で結果の表示まで完結してしまうことから、イメージが掴みにくい欠点があった。そこで、三次元プリンターを用いて、航空機形状の印刷を行うことにより、計算機の中の飛行機と現実空間における航空機のイメージをつなぐ試みを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究室のワークステーションや東京大学の大型計算機を用いた解析が可能となり、多数の解析が実施できる環境が整ったため、数値流体力学を専門としない学生への利用も広がり、応用研究への展開が始まっている。また、基盤技術として更なるモデルの改良にも継続的に取り組んでいる。本プロジェクトも3年目となり、本年度は査読論文(和文4本、英文3本)に加えて口頭発表も多数行ったことから、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、更に大規模な格子が容易に生成できるようにソフトウエア及びハードウエアを整えるとともに、流体ソルバー側についても更なる高度化に取り組む。これまでは主に埋め込み境界法を主体とした境界条件の開発に取り組んできたが、異なるアプローチであるカットセルベースの方法についても検討し、両者の長所短所を明らかにしたい。また、これまで開発してきたプログラムを基盤として、着氷シミュレーション等マルチフィジックス問題への応用や非定常問題へ、積極的に取り組みたいと考えている。
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