H27-30年度の若手研究(A)「空力・空力音響基盤技術としての階層型直交格子法を用いる圧縮性流体解析法の構築」においては、完全自動格子生成が可能な圧縮性流体解析プログラムUTCart(The University of Tokyo Cartesian grid based automatic flow solverの略)の開発に取り組んできた。本ソルバーでは完全自動で格子生成可能な階層型直交格子を採用することで、複雑形状周りでも簡単に流体解析できる。さらに、従来階層型直交格子を用いて流体解析することが困難であった高レイノルズ数流れの解析が可能となる物理モデル(壁関数)を開発・実装した。階層型直交格子法に基づく流体解析手法において、高レイノルズ数流れに対応したRANS用の乱流モデルと物理モデル(壁関数)が実装されている流体解析プログラムは世界的にもUTCartだけである。東京大学の大型計算機(Reedbush-Uシステム)を使用することで、約3億点規模の流体解析が実行できるまでになった。また、非定常音響解析に適した高次精度スキームや乱流モデルの改良等に取り組んだ。また、UTCartは、格子生成プログラムと圧縮性流体解析プログラムが一体化しており、CFDの実行に要する研究者・技術者の負担を大きく軽減できる。最適化解析や異分野統合解析(流体構造連成や翼への着氷解析)を実行する際の基盤となる空力解析プログラムとして、その利用の可能性に広がりが見えてきた点についても、今後更に研究が展開することが期待される。
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