研究課題
平成27年度は、次年度の電子ビーム実験に向けた、測定系の開発およびパルス圧縮のためのアンジュレータ設計を行った。1. 時間・周波数領域測定系の開発:従来よりも詳細なコヒーレント遷移放射(CTR)のテラヘルツ波解析の可能な、時間・周波数領域測定系の開発を行った。CTRで発生したテラヘルツパルスを模擬して、光電導アンテナ(PCA)にフェムト秒レーザーを照射してテラヘルツパルスを発生した。発生したテラヘルツパルスの時間領域測定手法として、テラヘルツ光路内に挿入した高抵抗シリコンに、分岐・時間遅延を調整したフェムト秒レーザーを照射して、透過テラヘルツパルスの強度をモニターした。一方、周波数領域測定として、レーザーを照射しないシリコン透過テラヘルツパルスをマイケルソン干渉計により分光した。また、石英等の分散媒質により検出されるテラヘルツパルスの周波数が変化したときに、時間領域の立ち上がりに変化が起きることが分かった。2. アンジュレータ設計:光源加速器等で用いられているレーザーとアンジュレータによる電子ビームのエネルギー変調について、短パルス電子ビームの発生への応用可能性の検討を行った。具体的には、光電場(波長:800 nm)とアンジュレータ(1次の共鳴条件の波長:800 nm)による電子ビーム(32.5 MeV)のエネルギー変調とマイクロバンチング過程を利用した、パルス圧縮に利用可能なアンジュレータの設計を行った。アンジュレータの磁場分布を、Poisson Superfishコードにより計算した。電子ビーム進行方向の磁場の周期長6.6 mmの半分の長さを考慮し、幅:3.3 mm着磁方向が180度異なる2種類の磁石を交互に並べた系を計算した。ギャップ長が3 mmの時に磁場強度は3.5 kGとなることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
1. 時間・周波数領域測定系の開発:今後、従来よりも詳細なコヒーレント遷移放射(CTR)のテラヘルツ波解析が可能になると考えられる。また、測定テラヘルツパルスの周波数が変化した時に時間領域の挙動に変化が起きることが明らかとなり、電子ビームが発生した電場波形の時間領域と周波数領域の情報が実験的に繋がる可能性が期待されるためである。2. パルス圧縮装置の設計、ラジアル偏光テラヘルツ波の応用:32.5 MeVの電子ビームに対するアンジュレータ(1次の共鳴条件の波長:800 nm)を製作できることが分かった。今後、共鳴条件を満たすアンジュレータとフェムト秒レーザーを用いて、マイクロバンチングによるパルス圧縮が期待されるためである。一方では、光伝導アンテナ(PCA)を用いたテラヘルツ発生の電場強度を高めるための電極間破壊電圧(>50 V)の見積も行った。今後、電子ビーム圧縮におけるラジアル偏光テラヘルツ波の利用検討も行う。
1. アト秒電子ビーム測定系の開発:時間・周波数領域の測定が可能な、測定系の開発を行う。テラヘルツ波解析に限らず、より短パルスの電子ビームを測定するために、分析光等に利用可能なフェムト秒レーザーの白色化による再圧縮されたパルス光(電場)発生系の構築も行う。同時に、電子ビーム発生条件を最適化し、光伝導アンテナ、干渉計、過渡反応解析(イオン化反応等)等を利用した測定系を構築する。2. 電子ビームパルス圧縮系の開発:前述の、フェムト秒レーザーを用いた電子ビーム圧縮実験を行う。まず、ラジアル偏光板の導入により、ラジアル偏光場を用いた電子ビームとの相互作用を利用した電子ビームパルス圧縮実験を行う。また、前年度に設計したアンジュレータを製作し、アンジュレータを用いたパルス圧縮についても検証を行う。アンジュレータの共鳴波長を微調できる機構(ギャップ長の変化もしくはアンジュレータ内でのビーム軸調整等)も同時に組み込み、レーザーを電子ビームと同軸で入射する。ラジアル偏光場もしくはアンジュレータによるパルス圧縮の効果の検証を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Electron. Comm. Jpn.
巻: 99 ページ: 22-31
10.1002/ecj.11767