研究課題/領域番号 |
15H05565
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅 晃一 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60553302)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超短パルス電子ビーム / ラジアル偏光テラヘルツ波 / 時間領域分光 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、次年度の電子ビーム・レーザー実験に向けた、時間分解テラヘルツ分光実験・アト秒電子ビーム発生のための理論的研究を行った。 1.時間分解コヒーレント遷移放射測定系の開発:これまでに行ってきたフェムト秒電子ビームのマイケルソン干渉計と光伝導アンテナを組み合わせて、それぞれ、周波数領域と時間領域測定の同時計測が可能であることが明らかになった。現段階では、両手法の測定結果に差異が観測されているが、35 MeVのサブピコ秒の電子ビームの測定に応用可能であることが分かった。さらに、光伝導アンテナでは電場の方向(負電荷の電場の流入)の測定を議論できる可能性も明らかになった。今後、光伝導アンテナ測定系の高感度化・広帯域化を行うとともに、コヒーレント遷移放射等のパルス電子ビームの放射する電場の周波数・時間領域の情報に関する包括的な理解を深める。 2.アンジュレータを用いた電子ビーム変調・圧縮の検討:今年度はレーザーとアンジュレータを用いた電子ビームエネルギー変調(・圧縮)についての理論的な研究を行った。実験的な側面から、電子ビームのエネルギー:32.5 MeV、エネルギー分散:0.2%の電子ビームに対するエネルギー変調の計算を行った。アンジュレータの周期長、周期数、最大磁場強度を、それぞれ、6.6 mm、20、2.5 kGとした。その結果、波長800 nmのレーザーを用いて、電子ビームのスライスエネルギー分散を約1.5倍に変調可能であることが計算により得られた。今後、自由空間における位相空間分布の回転によるパルス圧縮の検討・実験を行うと共に、アト秒電子ビーム発生を実現する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 時間分解コヒーレント遷移放射測定系の開発:今後、電子ビームとレーザー相互作用を研究するための下地を整えた。また、光伝導アンテナの特殊性(電場の方向測定)の研究も行うことが可能となった。今後、レーザーを利用したラジアル偏光場による電子ビーム圧縮・高時間分解能の時間領域測定への展開を行う。 2. アンジュレータを用いた電子ビーム変調・圧縮の検討:アンジュレータ製作と磁場・レーザー強度・自由空間等の最適化は今後の課題であるが、32.5 MeVの電子ビームに対するアンジュレータを用いた電子ビーム圧縮の可能性が明らかとなった。また、電子ビームとレーザーによる時間分解計測への展開も可能であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. アト秒電子ビーム発生・測定系の開発:ラジアル偏光素子を導入し、電子ビームと同軸入射を行い、電子ビーム圧縮実験を行う。同時に、時間・周波数領域の測定が可能な、測定系の開発を行う。より短パルスの電子ビームを測定するために、分析光等に利用可能なフェムト秒レーザーの白色化による再圧縮されたパルス光発生・測定系の構築を行う予定である。 2. アンジュレータの製作と電子ビーム圧縮実験:周期長6.6 mm、最大磁場強度2.5 kGのアンジュレータ製作を行う。電子ビームエネルギー分析システム、コヒーレント光学遷移放射測定系を組み合わせると同時に、電子ビームエネルギーを変化させながら、レーザーを用いた電子ビーム圧縮実験を行う。
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