本研究は、パルス超音波デコンボリューション法を用いた従来にない全く新しい超音波流速分布過渡流量計の基礎システムを構築し、産業技術総合研究所の流量検定設備を用いた実流試験にて検証することを目的とし、本年度は、昨年度までの研究を通じて明らかになった詳細評価試験上の課題である流体温度、上流配管レイアウトによる流速分布の影響、更に配管寸法公差に起因した超音波伝搬経路偏差の影響を安定的に制御可能な実流設備並びに配管を整備し評価試験を行った。また、本評価試験においては、直径200mm程度の中口径配管を用いた設備を使用する必要があるため、短伝搬経路及び低流速条件における計測を可能とするため10MHzの高周波超音波の適用に成功した。通常、その信号微弱性から流量計測には適用されない高周波数帯であるが、これによりサンプリングレートの抑制と測定空間分解能の向上が可能となった。これらのハードウエア及びソフトウエアの整備を完了した上で、上記の流速分布過渡流量計システムの実機適用性試験を、産総研所有の流量検定設備を用いて実施した結果、パルス超音波デコンボリューション法の基盤となる異超音波伝搬経路上の遅れ時間差の安定した測定に成功し、それらの偏差より配管断面上の局所流速計測の可能性を確認した。また、微弱検出信号の検出率向上を目的とした特殊形状パルスを用いた信号処理手法を用いて、その検出率向上が可能であることも示した。これらの結果より、パルス超音波デコンボリューション法を用いた従来にない全く新しい超音波流速分布過渡流量計の実現可能性が示されたことは重要な成果である。
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