研究課題/領域番号 |
15H05567
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
能村 貴宏 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50714523)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 省エネルギー / 蓄熱 / セラミックス / エクセルギー / 熱輸送 |
研究実績の概要 |
本研究では、相変化物質(PCM:Phase Change Material)の固液相変化潜熱を利用して、高密度蓄熱・一定温度熱供給が可能な潜熱蓄熱を基盤とした、高温蓄熱・熱輸送技術の確立を目指す。具体的には「高蓄熱密度・迅速熱応答性・高温潜熱蓄熱熱輸送粒子=マイクロカプセルPCM」の開発を主目的とした。平成28年度までに、特定の温度領域ではあるが実用的な要求性能を満たすPCMマイクロカプセルの開発を達成した。そこで、平成29年度は(1)PCMマイクロカプセル含有蓄熱構造体の開発、及び(2)PCMマイクロカプセル含有蓄熱構造体を充填した蓄熱槽の伝熱性能解析を実施した。 (1)PCMマイクロカプセル含有蓄熱構造体の開発 本研究で作製したマイクロカプセルPCMは、コアがPCM、シェルがアルミナの構造を持つ。この特徴から、マイクロカプセルPCMはセラミックス粒子としてハンドリングすることができる。即ち、マイクロカプセルPCMを原料の一部として使用し、ボトムアップ的に様々な蓄熱構造体を開発可能である。そこで本研究では「ペレット」への成型を試みた。その結果、マイクロカプセルPCMと助焼結材をボールミルで混合し、混合体を一軸圧縮成型後、焼結することで、ペレット型蓄熱構造体の開発に成功した。また、この構造体は蓄放熱100cycle後もPCMの漏出はなく、形状を維持しており、実用に資する高い耐久性を確認することができた。 (2) PCMマイクロカプセル含有蓄熱構造体を充填した蓄熱槽の伝熱性能解析 上記、項目(1)で開発したPCMマイクロカプセル含有蓄熱構造体を充填した蓄熱槽の伝熱性能を調査するため、汎用熱流体シミュレーションソフトのComsolにて数値熱流体解析を実施した。その結果、開発した蓄熱構造体は既存のアルミナ等の固体顕熱蓄熱構造体よりも、高速の蓄放熱速度が期待できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請書段階では、学生2、3名との研究チームを想定していたが、本研究テーマに大きな魅力を感じた学生が増え、現在では7、8名のメンバーからなる研究チームに成長した。その結果、ディスカッション、実験の量・質ともに向上し、申請書当初の研究計画以上に研究が進展した。また、蓄熱構造体開発においては、当初想定していなかった事象を見出し、その展開が加速している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までに基礎的な材料開発(=マイクロカプセルPCM)、応用的な材料開発(蓄熱構造体)に成功した。今後は、これらの材料を利用するプロセスについての研究にリソースを投入することで、さらに研究推進が加速すると考えている。また、平成30年度は本研究テーマの最終年度である。次なる大きな発展的展開および社会実装につなげるため、各業種の研究者と具体的な利用形態、利用プロセスをとディスカッションする機会を積極的に設けることを考えている。
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