エネルギー利用システム高効率化のためには高温蓄熱・熱輸送システムの導入が不可欠である。しかし、既往の顕熱蓄熱秘術は低蓄熱密度のため、新たな技術基盤の確立が切望されている。そこで本研究では、相変化物質(PCM:Phase Change Material)の固液相変化潜熱を利用して、高密度蓄熱・一定温度熱供給が可能な潜熱蓄熱を基盤とした、高温蓄熱・熱輸送技術の確立を目指す。具体的には「高蓄熱密度・迅速熱応答性・高温潜熱蓄熱熱輸送粒子=PCMマイクロカプセル」の開発を主目的とした。最終年度前年までに、様々な合金系においてPCMマイクロカプセルの開発に成功し、使用温度領域のラインナップを拡大することができた。また、他の材料とPCMマイクロカプセルのコンポジット化により、ペレットやミリサイズの粒子などのバルク材料への展開が可能となった。最終年度はこれらの利用プロセスの検討を目的として、触媒とPCMマイクロカプセルをコンポジット化し、触媒の熱制御プロセスへの応用に向けた基礎検討を実施した。その結果、PCMマイクロカプセルへの触媒担持は、古典的な含浸法や共沈法にて容易に達成することができた。また、作製したNi触媒担持PCMマイクロカプセルはメタネーション反応の発熱反応制御や、エタノールの水蒸気改質プロセスの吸熱反応制御に利用可能であることがわかった。また、Niのような単一組成だけではなく、Ni-ZrO2などの一種以上の物質を同時にPCMマイクロカプセル上へ担持することも可能となった。
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