本研究では、ストレス応答時の多数の脳活動パターンと末梢活動がどのように関連するか解明することを目的とした。ラットにおいて、数十本の脳波測定用電極を脳に埋め込み、同時に心電図測定電極、呼吸リズム測定電極を埋め込んだ。これらの電極の信号を1つの装置に効率的に取り込むために、動物の頭部に設置できる電子回路基板を作成した。これまでに、ラットに社会的敗北ストレスを加える行動実験を行っても、本計測システムにて脳波と心電図、呼吸リズムが安定に記録できることを確認している。本研究成果を、Biological and Pharmaceutical Bulletin誌に発表した。また、詳細な実験手順を動画として記録し、この動画をJournal of Visualized Experiments誌に発表した。さらに、心臓を同時に電気刺激するなど臓器活動の操作も同時にできる方法を開発し、本研究成果を、Neuroscience Research誌に発表した。ラットに社会的敗北ストレスを負荷し、心電図の変動を基に、動物群をストレス感受性群と非感受性群に分けて、大脳新皮質の複数領域および海馬から記録された脳波を解析した。解析の結果、ストレス負荷前の低周波帯の脳領域間のコヒーレンスの度合いが、後のストレス応答の感受性を予測する因子となること、ストレス応答後には、ガンマ帯を除くほぼすべての周波数帯において、変動が見られた。また、ストレス感受性群においては、セロトニンの濃度の変動が大きく、こうした濃度変化が脳波パワーの変動につながる可能性を示唆した。
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