大腸癌の死亡原因は、他の癌種と同様に、主として転移によるものである。微小な転移像が観察されない大腸癌患者では原発巣の外科摘出によりほぼ確実に治癒する。従って、転移形成までの素過程を制御出来れば、大腸癌を克服出来ることに論を俟たない。しかしながら、大腸癌研究においては良性腫瘍の発生から悪性化を引き起こす臨床を反映する実用的なモデルは極めて少なく、腸管腫瘍モデルマウスへの交配による遺伝子導入実験では、原発巣からの離脱や脈管内への侵入の過程までしか明らかにされていない。さらに悪性化する表現型を得る為には多数の変異導入が必要であると推測されているが、マウス交配による遺伝子導入には確率的な限界という問題がある。この現状は、有望な大腸癌の悪性化制御薬の開発を困難にしている。このような状況下、申請者は悪性腸癌モデルマウスの樹立に成功した。本研究では、当該マウスのがん悪性化機構を解明することで、大腸癌を制御するための治療標的を見出だすことを目的とし、解析を進めた。
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