研究課題/領域番号 |
15H05575
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
弓本 佳苗 九州大学, 生体防御医学研究所, 研究員 (30596838)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん転移 / ユビキチンリガーゼ / がんニッチ |
研究実績の概要 |
末梢血循環腫瘍細胞量(Circulating tumor cells, CTCs)の測定:蛍光ラベルをしたE0771乳がん細胞を乳腺周囲脂肪に移植し、マウスの血液を採取して、蛍光を指標にCTCs量を測定する予定であったが、末梢血中にはほとんどCTCsの蛍光を検出することができなかった。 ・原発巣のニッチ及び転移巣の前転移ニッチの形成の確認:GFPラベルした骨髄を移植したマウスにE0771乳がん細胞を移植した。移植4日後から、肺にはGFP陽性の骨髄由来細胞が集積していた。また、野生型骨髄移植マウスと比較して、Fbxw7欠損骨髄を移植したマウスでは、肺へのGFP陽性骨髄由来細胞の集積が顕著だった。 ・他のがん細胞移植系におけるFbxw7骨髄欠損マウスの影響について:黒色細胞腫(B16F10)の経脾移植、および膵癌細胞(Pan02)の経脾移植、同所性移植、尾静脈移植をおこなったが、いずれもFbxw7骨髄欠損マウスにおける乳がん細胞移植のようながん転移の促進効果は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
末梢血循環腫瘍細胞量(Circulating tumor cells, CTCs)の測定において、蛍光ラベルをしたE0771乳がん細胞を乳腺周囲脂肪に移植し、マウスの血液を採取して、蛍光を指標にCTCs量を測定する予定であったが、末梢血中にはほとんどCTCsの蛍光を検出することができなかった。今後はマウスの全採血や蛍光タンパク質のqPCRによりCTCsを検出する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①生着促進因子 or 生着抑制因子(以下、分子a)の同定:ニッチ細胞をソート、培養し、培地中の分泌因子をサイトカインアレイにより解析する。すでに取得している末梢血の液性因子変動データと合わせ、生着促進因子 or 生着抑制因子の候補因子(分子a)を決定する。 ②分子a分泌細胞の同定:がんニッチには多種多様な骨髄由来細胞が含まれ、がん転移を促進もしくは抑制している。ニッチ細胞を表面マーカーで分画し、分子aを発現する細胞を特定する。特定した細胞特異的なFbxw7欠損マウスを作製し、腫瘍細胞の転移巣での生着の亢進がみられるか確認する。 ③生着亢進メカニズムの同定:分子aが転移先での生着を亢進させる分子メカニズムを検証する。この場合、がん細胞に直接作用する場合と、他のがんニッチ細胞に働きかけ、腫瘍が浸潤・生着する環境を整える場合が考えられる。分子aの既知の知見に基づき、考えるメカニズムを検証する。 ④分子メカニズムの決定:分子aがFbxw7低下により発現が変動する分子メカニズムを検証する。ユビキチンリガーゼFbxw7の欠損により基質のいずれかが分解できない結果、転移の亢進につながるものと推測される。ニッチ細胞において機能する基質のスクリーニングをおこなう。
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