研究課題/領域番号 |
15H05576
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村谷 匡史 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50730199)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム制御 / 癌 / エンハンサー / エピゲノム |
研究実績の概要 |
癌の臨床検体のゲノミクス解析は、遺伝子コード領域を重点的に解析するエキソーム解析によって大きく前進した。これにより、遺伝子機能に直接影響し、癌患者に高頻度で起こるドライバー変異が確立され、治療薬・診断薬の開発標的となり、一部は既に臨床応用されている。しかしながら、遺伝子のコード領域はゲノム全体の2%程度と言われ、その他のゲノム領域については解析が進んでいない。全ゲノムシークエンシングが世界的に精力的に行われる一方で、本研究では、ChIPseq解析をもとにゲノム制御に重要な領域を見出し、その領域を重点的にシークエンシングを行うことで、より効率的にゲノム上の機能的に重要な非コード制御領域を解析している。 今年度は昨年末に導入されたシークエンサーを活用して微量な検体を用いたChIPseqワークフローを完成し、同様な検体を用いたキャプチャーシークエンシングを開始した。肺癌を標的として本研究を継続しながら、ここで確立できた技術やノウハウを積極的に関連分野にも応用できるように、H28年度から設立準備が進められているトランスボーダー医学研究センターの活動としてゲノミクス解析が提供できる体制を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規に導入された次世代シークエンサーを直接運用できるようになり、これまでChIPseqによるゲノム領域のシークエンシングを直接変異検出に用いる場合に不利だった技術的な問題が改善された。このことにより、高価なカスタムプローブをデザインする当初の計画に比べ、解析を柔軟に行えるようになり、ゲノム変異とエピゲノム変化を同時に比べられるとともに、症例に特異的な変化を解析できるようになった。当初の目標を達成しつつ、より高度なゲノム―エピゲノム統合解析が出来るデータが蓄積されつつある。キャプチャーシークエンシングでの解析については、概念としては新規性があり、継続する。一方で、レーザーマイクロダイセクションで組織を切り分けやすい症例は肺癌では少なく、検体処理のペースが遅くなっており、「おおむね順調」と総合的に判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ユニークなデータセットは蓄積されつつあるので、癌研究と臨床検体のゲノム、エピゲノム解析研究分野の状況も考慮しながらインパクトの大きい論文として発表できるよう努力する。また、これまでに確立できたゲノム・エピゲノム解析、および臨床検体の解析法を、バイオバンキング事業とゲノミクス解析サービス等を通して他分野の研究者にもアクセスできるようにする。これによって、本研究を通して行った技術開発やデータ解析手法を、本研究以外の研究にも並列的に応用し、波及効果を最大化する。
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備考 |
次世代シークエンサーNextSeq500の運用を立ち上げ、本研究で使用されたゲノミクス解析が学外を含む研究者にも提供できる体制が、H28年度から設置されたトランスボーダー医学研究センターの活動の一部として整えられた。
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