研究課題
生物には、様々な色の光を感知する光受容体が存在するが、どの光受容体がどの色の光を感知してどの生理現象を制御するのかという光シグナル伝達経路の全体像を俯瞰する手法は確立されていない。本研究では、次世代シークエンサーを用いて光色による転写制御ネットワークの全容を明らかにする独自の手法の開発を行うことを目的とする。H27年度は、基礎生物学研究所の大型スペクトログラフを利用し、シアノバクテリアSynechocsytis sp. PCC 6803に多波長の光照射を行い、次世代シークエンサーIon Protonを用いたRNA-Seq解析によって遺伝子の発現パターンを取得した。得られた発現パターンをクラスター解析する事で、特異的な波長の光で誘導される遺伝子の包括的な同定に成功した。また、多様な光受容体遺伝子を持つNostoc punctiforme ATCC 29133についてもLED光源を用いて光照射を行い、次世代シークエンサーMiSeqを用いたRNA-Seq解析によって、光色依存的な遺伝子の発現パターンを明らかにした。さらに、光照射からRNA-Seq解析までの工程を簡素化するための、小型光照射装置の試作にも取り組んだ。続いて、生体内の色素情報の網羅的な取得のため、シアノバクテリア細胞のメタノール抽出物のLC-MS解析を行った。色素を効率よく検出するためには、質量分析のための溶媒やイオン化条件を最適化する必要があること、また、イオン化状況に影響を受けない吸光・蛍光のモニタリングの重要性が明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
細胞への光照射と次世代シークエンサーRNA-Seq解析を組み合わせる事で、特異的な波長の光で誘導される遺伝子の包括的に同定できることを世界で初めて実証できた。
当初の計画では、半値幅の小さい光を得るための小型光照射装置を自作する予定であったが、研究を効率的に進めるため、企業に装置の製作を委託する方針へと変更する。一連の解析の手法と光照射装置の特許を取得後、得られたデータを学会や論文等で積極的に発表していく予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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