交付申請書の実施計画に基づき、以下の研究を進めた。 (1)初期胚・胚体外組織におけるトランスクリプトーム・エピゲノム解析 マウスの生殖細胞における全ゲノムDNAメチローム解析・トランスクリプトーム解析に続き、マウスの着床前胚、および原腸陥入期の胚体と胚体外組織(胎盤組織)のアレル特異的なDNAメチロームマップの解析に成功した。また種特異的なDNAメチル化成立の要因を調べるため、ラットの卵子DNAメチローム解析・トランスクリストーム解析を新たに追加し、マウス・ラット・ヒト(公開済みデータ)の比較解析を行った。その結果、卵子で高発現するLTRレトロランスポゾンによる種特異的な転写ユニットにより、種・系統特異的なDNAメチル化が成立したことを明らかにした。この研究成果はカナダのブリティッシュコロンビア大学との共同執筆によりオンライン科学雑誌「Nature Communications」にて共責任著者として発表した(Brind'Amour J et al. Nat Commun. 2018)。 (2)Gpr1/Zdbf2領域の機能的解析・制御領域機構解析 Gpr1/Zdbf2領域を制御すると考えられる非コードRNA:Zdbf2linc(Gpr1as)の転写終了シグナル挿入によるノックイン・ノックアウトマウスを作製した。ノックインシステムはCRISPR/Cas9システムを採用し、初期胚での遺伝子発現への影響、および表現型に与える影響を解析していたが、他の海外の研究チームからノックアウト解析の論文が先に発表されたため(Greenberg MV et al. Nat Genet. 2017)、哺乳動物種間比較により、進化上におけるGpr1/Zdbf2成立機序を明らかにする方針に切り替えた。有袋類であるワラビーではGpr1/Zdbf2はインプリント制御を受けていないことが判明し、この遺伝子領域の刷り込み機構は少なくとも真獣類以降に成立したことを明らかにした(論文執筆中)。
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