研究課題/領域番号 |
15H05580
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
冨川 順子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (80534990)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生・分化 / クロマチン / エピジェネティクス / 染色体高次構造 |
研究実績の概要 |
本研究計画では、マウス初期発生過程におけるゲノムワイドな3Cデータと発現プロファイル、種々のエピゲノム解析により得た配列情報を統合解析することにより、[1]正常な発生に関わる機能的ゲノム領域の網羅化 [2]各分化段階に特徴的なエピジェネティックパターンを持つ領域の同定・選択 [3]ゲノム編集技術を用いた各候補配列を欠損させた細胞株の作製および表現型解析の大別して3つの項目を進めていく。本年度は、項目[1]および[2]を遂行した。 解析対象には、全能性細胞モデルとしてマウス2細胞期胚 (2C)、胚体系列細胞モデルとしてマウスES細胞 (ES)、胚体外系列細胞モデルとしてマウスTS細胞 (TS)をそれぞれ用い、3者間でどのような核内ゲノム構造の変化が起きているのか、その全貌を明らかにするためにHi-C法によるゲノムワイドな解析を行い、ゲノムの集積状況を反映した配列データを取得した。Hi-C法により得られた配列情報を、2C特異的あるいはES/TS特異的など、3者間の比較結果から分類を試みた。抽出された各分化段階特異的なクロマチン構造の特徴を捉えるためのアプローチとして、3者の発現プロファイル、ChIP-seqおよび遺伝子発現制御に関わるオープンクロマチン領域を検出するFAIRE (Formaldehyde-assisted isolation of regulatory elements)-seq解析を並した。以上より得られた諸情報をバイオインフォマティックな解析により統合し、各染色体から個別解析可能な規模の対象領域の絞り込みを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ES、TS細胞につづき、平成27年度において計画していた、全能性細胞モデルとなる2細胞期胚での相互作用領域の検出に成功した。これまでに報告のない2細胞期胚でのデータ取得は大きな進展であった。現在、Hi-C 法により得られた配列情報を3者間の比較結果から分類し、標的配列の絞り込みを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、項目[2]を前年度にひきつづき進めるとともに、絞り込んだシスエレメント候補配列について、ゲノム編集技術を用いて各候補配列を欠損させた標的領域欠損マウスを順次作製する。得られたマウスモデルでの胚体、胚体外両細胞系列の発生、分化状態を検証することにより、個体レベルでの生理機能解析を試みる。 生理機能解析においては、当初はES、TS細胞を用いる計画であったが、初期胚での解析に変更することとする。ゲノム編集により標的配列を欠損させたマウス系統の作製・維持に当初の予定より時間を要する可能性もあるが、初期発生段階を解析することは、全能性を含む発生、分化能を解析するにあたってより適切なモデルとなると考えており、すでに同成育医療研究センター研究所内においてモデルマウス作出に関する協力体制も整えてある。
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