研究実績の概要 |
前年度までに,アシルセラミドは脂肪酸伸長酵素ELOVL1, ELOVL4によるアシルCoAの伸長(超長鎖アシルCoAの合成),超長鎖アシルCoAのCoA脱離)超長鎖脂肪酸の産生),脂肪酸ω水酸化酵素CYP4F22による超長鎖脂肪酸のω水酸化,アシルCoA合成酵素によるω水酸化脂肪酸のω水酸化アシルCoAへの活性化,セラミド合成酵素CERS3によるω水酸化アシルCoAと長鎖塩基の縮合(ω水酸化セラミドの合成),PNPLA1によるω水酸化セラミドへのリノール酸の付加反応を経て合成されることを明らかにした。 当該年度は,上述の経路における未同定のアシルCoA合成酵素の同定を目的に,前年度から作製を行なっていたAcsvl4 KOマウスの解析を行なった。ACSVL4は魚鱗癬未熟児症候群の原因遺伝子であり,Acsvl4 KOマウスは皮膚バリア機能の低下を示し新生致死となることが報告されているが,その皮膚バリア形成異常の分子メカニズムは明らかになっていなかった。Acsvl4 KOマウスはすでに報告があったが入手できなかったため,CRISPR/Cas9システムを用いて作製した。作製したAcsvl4 KOマウスも過去の報告と同様の皮膚症状を示した。Acsvl4 KOの表皮の詳細な脂質組成を調べたところ,Acsvl4 KOの表皮ではアシルセラミド量が顕著に低下していることを見出した。また,ω水酸化アシルCoA以降の代謝物の総量(ω水酸化セラミド,アシルセラミド,アシルグルコシルセラミド,タンパク質結合型セラミド)が低下していた。膜画分を用いたin vitroの活性解析においてACSVL4はω水酸化脂肪酸のCoA付加活性を示した。これらの結果から,ACSVL4はアシルセラミド合成経路におけるω水酸化脂肪酸をω水酸化アシルCoAへ変換する酵素であることを明らかにした。
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