研究実績の概要 |
細胞の外側を取り囲む細胞膜には、チャネルやポンプ、トランスポーター、レセプターなど様々な膜タンパク質が存在し、細胞膜を隔てた物質輸送やシグナル伝達などの重要な役割を担っている。遺伝情報の約30%が膜タンパク質であり、また、膜タンパク質は創薬の重要なターゲットでもあるため、その立体構造と機能メカニズムの解明が盛んに行われている。近年、多量体から構成されるイオンチャネル(例えば、P2X4レセプター, NaKチャネル, MscLチャネル, MscSチャネルなど)が報告されている。これら多量体型イオンチャネルは、アミノ酸配列に相同性が無いにもかかわらず、いずれもモノマーが対称的に構造変化、すなわち膜貫通ヘリックスが傾き、ポアサイズを変化させることによりイオンの選択的透過性を制御している。チャネルはポンプと異なって、ATP などのエネルギーを消費することなく機能を発現することが分かっているが、チャネルの構造変化に関するエネルギー論的解釈はほとんどなされていない。タンパク質の大規模構造変化や機能発現を理解する上で、自由エネルギーが大きな鍵となる。本研究では、イオンチャネルのゲーティング原理を自由エネルギーに基づき解析することを目的として、新規方法論の開発とアプリケーション研究を行った。本年度は、2013年我々が開発した表面張力レプリカ交換法を、温度レプリカ交換法やアンブレラサンプリング法と組み合わせ、2次元表面張力レプリカ交換法へ拡張した。これらの方法を混合脂質二重膜および膜貫通ヘリックス2量体(Glycophorin A)に対して適用し、開発した方法の評価を行った。その結果、1次元表面張力レプリカ交換法と比べて効率の良い構造サンプリングが可能であることが分かった。
|