研究課題/領域番号 |
15H05595
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
田村 康 山形大学, 理学部, 准教授 (50631876)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / リン脂質 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ミトコンドリア・小胞体間のリン脂質輸送メカニズムを解明することである。これまでサイトゾルで合成されたタンパク質が,異なる細胞内区画に輸送されるメカニズムについては多くの解析がなされてきているが,リン脂質の輸送メカニズムはほとんど分かっていない。本研究ではミトコンドリアと小胞体を結合し,リン脂質輸送反応も仲介すると考えられるERMES複合体のクラスタリング機構の解析と,新規ミトコンドリア及び小胞体リン脂質輸送因子の同定と機能解析を行う。これにより,リン脂質輸送機構の観点から,ミトコンドリアと小胞体の形態や量を維持するオルガネラ恒常性維持の分子機構の理解を目指すことを目的としている。 平成27年度は,(1)小胞体とミトコンドリアを物理的に結合させるERMES複合体のクラスタリング機構の解析,(2)in vitroリン脂質輸送実験系を利用した新規リン脂質輸送因子のスクリーニング,(3)ミトコンドリア膜間部に局在し,リン脂質輸送タンパク質であると予想されるUps2の機能解析を行い,以下の成果を上げることに成功した。(1)ERMES複合体による小胞体とミトコンドリアのコンタクトの数がミトコンドリアの融合と分裂により制御されることを発見,(2)小胞体・ミトコンドリア間のリン脂質輸送を制御する新規因子の発見,(3)Ups2のリン脂質輸送能の解明に成功。 これらの成果は,オルガネラ間リン脂質輸送機構の解明にとどまらず,オルガネラ恒常性維持機構の解明に繋がる重要な発見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に行う研究として,(1)小胞体とミトコンドリアを物理的に結合させるERMES複合体のクラスタリング機構の解析,(2)in vitroリン脂質輸送実験系を利用した新規リン脂質輸送因子のスクリーニング,(3)ミトコンドリア膜間部に局在し,リン脂質輸送タンパク質であると予想されるUps2の機能解析,の3つのテーマを計画していた。これらの研究計画について以下の重要な発見に至った。(1)小胞体・ミトコンドリアコンタクトサイトの数がミトコンドリアの融合分裂により制御されることを明らかにした。(2)小胞体・ミトコンドリア間のリン脂質輸送を制御する新規因子の同定に成功した。(3) Ups2の機能解明に成功した。これらの結果から,本研究課題は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は27年度に得られた知見を元に,さらに研究を進める。具体的には同定した新規リン脂質輸送因子の機能解析を行い,この因子が,小胞体・ミトコンドリア間リン脂質のどのステップにどのように影響するのか,その詳細なメカニズムを明らかにする。またin vitroリン脂質輸送実験を応用した新規因子のスクリーニングをさらに進め,新規リン脂質輸送因子の同定を目指す。 またミトコンドリアのダイナミクスとオルガネラコンタクトの関係を明らかにする。これまでに,ERMES複合体の数がミトコンドリア分裂が阻害された時に減少し,ミトコンドリアの融合が阻害された時に増加する事を明らかにした。今後,ミトコンドリアの分裂によりERMES複合体も分割されるのか,それともミトコンドリアの分裂によりERMES複合体の不必要な融合を妨げるのか,について検討する。 また,出芽酵母を用いた研究により得られた知見を基に,ヒトなどの高等真核生物において,小胞体,ミトコンドリアもしくは他のオルガネラ系がどのような相互作用をしているのかを新たに解析する予定である。
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