植物は、光を受容する集光アンテナタンパク質の発現・解離・再結合により、様々な光合成超分子複合体を形成する。これにより、刻々と変化する周囲の光環境へと適宜適応している。特に、強光ストレスから光合成装置を守る強光適応(消光メカニズム:NPQ)の存在は、多くの植物研究者の知るところであるが、その分子基盤に関与する光合成超分子複合体の形成メカニズムは、未だ全容が分かっていない。本研究では、光合成生物のNPQに直接作用する集光アンテナの発現制御機構の解明と、それらのタンパク質が光合成反応中心へ結合したNPQ超分子複合体の形成メカニズムおよび動的な構造解明を目的とした。 平成30年度の実績として、光防御を駆動するタンパク質の一つであるLHCSR1の発現誘導メカニズムについて研究を進めており、昨年度発見したLHCSR1が紫外線依存・光合成非依存的に発現誘導される特徴を指標として変異体スクリーニングを行なった。その結果、複数のLHCSR1発現誘導変異株の取得に成功し、変異体のグループ分けが完了したためオープンアクセス科学誌であるScientific Reportsに研究成果として発表した。現在、グループ分けした変異体それぞれについて、その特徴付けを行なっているところである。 また、ステート遷移と呼ばれる光適応メカニズムが、従来の集光アンテナ移動モデルとは異なり、光化学系同士が密接に相互作用することで発生する、直接的な励起エネルギー移動であることを明らかにした。また、光化学系同士の相互作用には光化学系Iの集光アンテナが重要であることを明らかにし、これらをまとめて論文化を進めている。
|