研究課題
約24時間の環境変化を予測するために、多くの生物は概日時計を持っている。動物においては行動、生理、代謝、内分泌など多くの生物活動に24時間の周期性があることが分かっている。また、多くの動物の概日時計の中枢機構は脳にあることが明らかになっており、特にキイロショウジョウバエでは約150個の脳内神経細胞が概日時計を構成していることが同定されている。本研究では、そのキイロショウジョウバエの150個の時計細胞が、どのような神経回路によって結びつき、その神経回路にどのような生物学的意義があるのかを明らかすることを目指している。本年度の研究では、RNA干渉法を用いた遺伝子特異的ノックダウンとCCHa1変異体を用いた実験により、CCHa1神経ペプチドが概日時計に関与することを明らかにすることができた。また、CCHa1受容体が時計細胞の一部で発現していることも明らかにし、予定以上に研究が進展するところも見られた。予定していたCCHa1過剰発現系統の作製は完了しているが、予想よりも発現量が低かった。この点については、今後改善の余地があると思われる。また、計画していた生物発光を用いた時計遺伝子発現のリアルタイムイメージングにおいては、ほぼその手法を確立することができた。一方で、これまで行ってきた免疫染色によるタンパク質発現の可視化は、生物発光を用いた方法よりも得られるデータの空間解像度が優れており、リアルタイムイメージングと免疫染色は、うまく使い分ける必要がある。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに、CCHa1変異体を得ることができ、またそれを使いCCHa1神経ペプチドの機能解析を行うことができた。またRNA干渉法による手法と組み合わせることにより、CCHa1受容体の研究も進展した。計画していた生物発光イメージングの確立も予定通り進んでいる。計画にはなかったが、CCHa1受容体の脳内の発現場所を明らかにすることもできた。
研究は計画通りに進んでいるので、次年度以降も、そのまま継続していく。生物発光イメージングの改善や、その応用を中心に進め、平行して神経伝達物質の多重変異体を作製する。多重変異体が作製されしだい、活動リズムの計測を行い、概日リズムに対する神経間ネットワークの働き明らかにしていく。また、生物発光イメージングのバックアップとして、免疫染色を平行して進めていくこと考えており、時計タンパク質の抗体作製を準備していくことを新たに計画している。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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