研究課題/領域番号 |
15H05603
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
入江 直樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (10536121)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 進化発生学 / EvoDevo / 発生砂時計モデル |
研究実績の概要 |
近年の比較遺伝子発現情報解析研究により、脊索動物を含む複数の動物門において、個体発生と系統発生(進化)の関係性を定式化したモデル(発生砂時計モデル)が支持されることが明らかになっている。しかし、このモデルの適用範囲や、どのような進化メカニズムにより、発生の途中段階が保存されるのかについては不明な点が多く、門内の主要なグループをカバーした大規模な研究が必要とされている。 本課題では、8種の脊索動物に加え、外群となる棘皮動物の遺伝子発現データを比較することでこうした問題に取り組む。今年度の脊索動物8種のデータを用いた解析によると、発生砂時計モデルは、遺伝子発現類似性の評価方法によって脊索動物門にまで適用できるとする従来説を支持する場合と、脊椎動物内の動物群にまでしか適用されないとする結果を得た。1:1遺伝子オーソログを用いた方法では、脊索動物門内の動物にまで適用できるとする結果であったが、この方法では全ゲノムの10分の1程度のオーソログ数しか解析対象とできなかった。一方で、パラログや遺伝子喪失も考慮した発現比較方法では、脊椎動物亜門内の動物に限られることがわかった。いずれの方法でも支持される結果として、発生砂時計モデルは、従来のように動物門単位に適用されるごとに定義されるというよりも、脊椎動物亜門内の動物門に適用されるという結論に至った。来年度以降は、この適用範囲内において発生砂時計モデルが成立するのかその進化メカニズムを探索することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた量に見合う核酸の抽出ができず、一部予算を繰り越しとし、来年度に持ち越しとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、8種の脊索動物に加え、外群となる棘皮動物の遺伝子発現データを比較することでこうした問題に取り組む。今年度の解析によると、発生砂時計モデルは脊椎動物亜門内の動物に限定される可能性が高くなった。引き続き、棘皮動物のゲノム・トランスクリプトーム決定は進めるが、来年度以降は、脊椎動物亜門内において発生砂時計モデルを成立させる進化メカニズムについて探索することを目指す。
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