研究課題
昨年度に引き続きカンアオイ属について花香成分の分析を進め、東アジア固有の単系統群カンアオイ節全61種のうち50種を網羅した花香成分プロファイルのリストを得た。この情報をdd-RAD-seq法による分子系統樹にマッピングした結果、腐肉擬態花を特徴づける成分であるジメチルジスルフィドを放出する形質が系統内で10回以上進化していることを見出した。また、ジメチルジスルフィドを花から放出する種であるフジノカンアオイの花に同位体ラベルした基質成分を吸わせ、たしかにこの基質成分がジメチルジスルフィドに代謝されていることを証明した。また昨年度に引き続き、タマノカンアオイ、ランヨウアオイ、タイリンアオイについて送粉様式の調査を行った。この結果、ランヨウアオイではノミバエ類やその他のハエ類、タマノカンアオイやタイリンアオイではキノコバエ類が主要な送粉者である可能性が示された。また、これまでの研究から花香プロファイルの変化が種分化に大きな役割を果たしたと考えられるチャルメルソウ属については、種分化に重要と考えられる花香関連4遺伝子に姉妹種チャルメルソウとコチャルメルソウ間で分断化淘汰が働いたことを実証するため、引き続き進化遺伝学的解析を行った。特にこの目的のため、チャルメルソウおよびコチャルメルソウのドラフトゲノム配列を得て、両者のゲノム比較を行うための足がかりを作った。なお、このチャルメルソウとコチャルメルソウの間の生殖隔離を担う特異的な送粉者であるミカドシギキノコバエおよびコエダキノコバエ類について、それぞれの幼虫が異なる蘚苔類を食草としていることを突き止めた。このことは、両種の送粉者を介した種分化に、送粉者が利用する蘚苔類の生態が関与している可能性を示唆している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
生物科学
巻: 70 ページ: 112-123
Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series B, Botany
巻: 44 ページ: 41-51
Ecology
巻: 99 ページ: 1890-1893
Chromosome Botany
巻: 13 ページ: 9-24
巻: 44 ページ: 173-179