研究課題
本年度は、従属栄養性珪藻類における細胞内代謝を明らかとするため、エネルギー産生に着目してその経路を明らかとした。得られたトランスクリプトームデータからタンパク質配列を推定し、発現タンパク質データセットを作成した。それを用いた配列ホモロジー検索によりKOIDを得、代謝マップを作成した。モデル珪藻類のKOID種や代謝マップと比較したところ、明確な違いは見られなかった。そこで光合成能の喪失に着目し、葉緑体内代謝経路を探索した。その結果、ルビスコによる炭酸固定能およびイソプレノイド合成系を失っているものの、それ以外の葉緑体ペントースリン酸経路や葉緑体解糖系、葉緑体アミノ酸合成経路などは保持されていた。また、葉緑体局在基質トランスポーターが同定された。このことは、細胞質の解糖系およびペントースリン酸経路などで産生された糖リン酸を葉緑体内に輸送し、上述した代謝経路を機能させているという可能性を強く示唆している。従属栄養性珪藻類の一種を用いて栄養要求性の実験を行ったところ、グルコースの資化性は有していないことが分かった。しかしアミノ酸は資化可能であった。また、上述したトランスクリプトーム解析からトランスポータータンパク質データを抽出した。その結果、他の光合成性珪藻類がもたない炭素源トランスポーターが同定された。分子系統解析を行ったところ、単細胞寄生性真核生物2種と単系統となり、その統計的支持は最大であった。この3配列以外に、真核生物からは本遺伝子は同定できなかった。この3種のクレードはバクテリアのものと単系統となったため、バクテリアから真核生物への遺伝子水平伝播が起き、その後、真核生物間で同様に遺伝子水平伝播が起きたと考えられる。現在、本トランスポーターが細胞膜に局在し、配列から推定される基質で増殖可能かどうか実験を進めている。
2: おおむね順調に進展している
計画書通りもしくは計画書で予定していたよりも少し早い段階でデータが得られている。
これまで計画通りか、もしくはテーマによっては予定しているよりも早い段階でデータが得られている。計画に従い粛々と進めていく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Ecology and Evolution
巻: 1 ページ: 0092
10.1038/s41559-017-0092
Current Biology
巻: 26 ページ: 2729-2738
10.1016/j.cub.2016.08.025
Genome Biology and Evolution
巻: 8 ページ: 3090-3098.
10.1093/gbe/evw217
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