中低緯度の貧栄養海域では,プロクロロコッカス属のピコシアノバクテリアが高度に優占することが知られているが,これら直径が0.6μm程度の微細な球形細胞については,「濾過食者である多細胞動物プランクトンが植物プランクトンを補食する」という海洋生態系の古典的なパラダイムが通用しない。本研究では,「プロティスト(原生生物)による食胞作用によるプロクロロコッカスの捕食を起点とした,より大型の生物へエネルギーを供給する食物網が存在する」という仮説を立て,プロクロロコッカスに固有な光合成色素であるジビニルクロロフィル類の捕食者による代謝産物に着目することで,その証明を試みた。
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