本研究は、ヒトの根源的な生物学的特徴である直立二足歩行がヒト系統でどのような分化を遂げたのかを明らかにすることを目的としている。現生人類と、それに最も近縁な化石人類であるネアンデルタールとの比較を行い、二足歩行の成長様式の類似性と差異を明らかにする。 本年度は、当初の計画に従い、形態解析の基礎となる三次元データを収集した。特に、現生人類を中心にデータ収集を行った。骨格は主に京都がにて医療用CT(コンピュータ断層)装置を用いて計測した。あるいは、海外の協力機関から、法医学データ(匿名化されている)データを継続的に集めている。また、体サイズの小さな標本はスイス・チューリッヒ大学においてマイクロCTを用いて撮影した。結果、本年度は出生からオトナに至る、約70個体分のデータを集めることができた。これらのデータは、今後、形態地図法など、詳細な形態解析を行う上で重要な基礎データとなる。 ヒトでは、身長や体重といった単純な計測項目では成長データは知られているが、詳細な形態変化については未知のことが多い。特に、歩行の要である大腿骨形態の成長に伴う変化の詳細は明らかになっていない。本年度は、年齢が判明している法医データを中心に収集した。年齢が明らかになっているため、横断データではあるが、成長変化を明らかにする上で非常に有用性の高いものだと言える。これを基礎データとして、今後詳細な形態解析を行う予定である。また、比較データとして、年齢は分からないものの、ある程度成長全期をカバーする範囲で、京都大学の所蔵する縄文人骨のデータも収集した。
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