本研究は、ヒトの根源的な生物学的特徴である直立二足歩行がヒト系統でどのような分化を遂げたのかを明らかにすることを目的としている。現生人類と、それに最も近縁な化石人類であるネアンデルタールとの比較を行い、二足歩行の成長様式の類似性と差異を明らかにする。 本年度は、当初の計画に従い、形態解析の基礎となる三次元データを収集した。特に、現生人類を中心にデータ収集を行い、比較のため、後期更新世のホモサピエンス個体のデータも取得した。 現生人類のデータは、主に京都大学付属博物館所蔵の骨標本を医療用CT(コンピュータ断層)装置を用いて計測した。また、海外の協力機関から、法医学データ(匿名化されている)データを継続的に集めている。ヒトでは、身長や体重といった単純な計測項目では成長データは知られているが、詳細な形態変化については未知のことが多い。特に、歩行の要である大腿骨形態の成長に伴う変化の詳細は明らかになっていない。京都大学付属博物館所蔵の骨標本と法医学データはともに、死亡年齢の判明している個体を用いた。本年度は、比較分析のために、大腿骨だけではなく、歩行とは本質的に関わりの無い上腕骨のデータも収集した。 これらのデータは、今後、形態地図法など、詳細な形態解析を行う上で重要な基礎データとなる。最終的には、解析対象として、生活様式や遺伝的背景が異なる複数の集団から、同程度の標本数で成長データを収集することを目指す。
|