今年度も沖積土と火山灰由来の洪積土の水田に、イネ4品種および遺伝解析材料を栽培し、経時的な生育調査と収量調査を行った。沖積土で栽培した4品種について経時的な指標遺伝子の発現プロファイリングを行い、窒素とリンの栄養状態の変化を解析した結果、昨年と同様にタカナリにおいて窒素指標遺伝子のプロファイルが他品種と異なっていることが確認された。また、戻し交雑自殖系統群における経時的なSPAD値(窒素栄養状態の指標の一つ)のQTL解析において昨年度得られた結果の再現性が確認され、さらに染色体断片置換系統の解析から2つの染色体のQTLについてその効果が確認された。 沖積土と洪積土の水田で栽培した4品種の経時的なマイクロアレイデータを使って比較解析を実施した。沖積土と洪積土の水田間の比較では、洪積土の分げつ形成期に著しく発現が上昇する遺伝子クラスターが観察されたが、生育過程を通して水田間の全体的な遺伝子発現にはほとんど差異が見られなかった。また、品種間の比較では、ジャポニカとインディカ間で発現量が異なる遺伝子が多数存在することが明らかになり、mRNA-Seqのデータからもその傾向が確認できた。 生育過程で大きな栄養状態の変化が起きる時期から表現型が現れる3種類の突然変異体について、原因遺伝子候補を絞り込んだ。また、3種類のうち2つの変異体についてマイクロアレイ解析を実施し統計解析を行ったところ、どちらの変異体でも表現型が現れる時期に発現が上昇する遺伝子が多数見出され、さらに2種類の変異体でそれら遺伝子の多くが共通しており、様々な代謝系に関わる遺伝子や転写制御に関わる遺伝子等が含まれていることが示唆された。
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