研究課題
NLP6の核外輸送領域を解析する過程において、NLP6タンパク質の不安定化を担う配列がある可能性が示唆された。NLP6断片とLUCの融合タンパク質を発現させる一過的アッセイにより、不安定化を担う領域はDNA結合ドメインよりもアミノ末端側と、カルボキシ末端側の少なくとも2箇所に存在することが分かった。またアミノ末端側の不安定化に必要十分な領域は核外輸送に関わる領域と重なる約150アミノ酸の領域であることも分かった。NLPタンパク質のNLPのカルボキシ末端側に存在するPB1ドメインはタンパク質相互作用を担うドメインであると予想されていたが、実際に酵母ツーハイブリッド系においてほとんどのNLPタンパク質PB1ドメイン間で相互作用が確認された。そこで本年度はシロイヌナズナ植物体を用いてPB1ドメインの役割を検討した。PB1ドメインの役割を評価しやすくするために、表現型が顕著なnlp6 nlp7二重変異体を用い、野生型NLP7、または、PB1ドメイン内の相互作用に必須なアミノ酸残基をアラニンに置換した変異型NLP7を発現させるコンストラクトを導入した。地上部新鮮重とNLPの標的遺伝子の発現を評価した。野生型NLP7、変異型NLP7両方のコンストラクトで地上部新鮮重は回復した。一方、nlp6 nlp7二重変異体で顕著に発現レベルが低下するNIA1の発現は、野生型NLP7のコンストラクトを導入した11系統全てで回復していたが、変異型NLP7を導入した場合には、13系統中3系統でのみ回復していた。他の標的遺伝子については、変異型NLP7を導入したことで親ラインであるnlp6 nlp7二重変異体よりも発現レベルが低下する系統があった。このことから、変異型NLP7はある程度機能を保持しているが、その活性は野生型NLP7よりも低くドミナントネガティブに働いている可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
NLPタンパク質の分子的解剖と相互作用因子の同定によるNLPの作用機作の解明を目的としているが、NLPタンパク質の不安定化を促進する領域があること、カルボキシ末端側の保存されたドメインがNLPの機能に影響することなどを明らかにしつつあり、NLPタンパク質の作用機作の解明に向けて進展している。
今後の方策 800文字NLP6だけでなくNLP7についても核外輸送配列の同定を進める。また、これまではプロトプラストにおける一過的発現系を用いて解析を進めてきたが、形質転換体も作成し、in plantaでの検証を行う。植物体におけるNLPタンパク質のPB1ドメインの役割を精査する。昨年度の野生型NLP7発現系統とPB1ドメイン変異型NLP7発現系統の遺伝子発現解析は、硝酸イオン含有培地で一定期間栽培したサンプルで行ったが、本年度は硝酸処理により硝酸シグナルに応答した遺伝子発現を誘導した場合のタイムコースをとって発現解析を行う。昨年度の結果と合わせて野生型NLP7発現系統と変位型NLP7発現系統で最も差が顕著な条件を決定し、トランスクリプトーム解析を行うことで、PB1ドメインが影響を与えている標的遺伝子を同定する。さらに、遺伝子発現のタイムコース解析と合わせてNLP7タンパク質の硝酸シグナルによるリン酸化や核局在、硝酸処理後のNLP7タンパク質量・リン酸化量の減衰がPB1ドメインの有無に影響されるかを調べ、標的遺伝子の発現制御パターンと相関があるかどうか検討する。
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Nature
巻: 545 ページ: 311-316
10.1038/nature22077
Soil Science and Plant Nutrition
巻: 63 ページ: 329-341
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