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2015 年度 実績報告書

植物鉄センシング分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15H05617
研究機関石川県立大学

研究代表者

小林 高範  石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70590206)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード鉄欠乏 / イネ / センシング / 転写因子 / ユビキチン
研究実績の概要

(1) 金属との結合状態が IDEF1 の DNA 結合様式に与える影響の解析:完全長または金属結合ドメインを欠失した IDEF1 と GFP との融合遺伝子を薬剤誘導性ベクターに組み込んでイネに導入した。この形質転換イネを水耕栽培し、IDEF1 と DNA との結合をクロマチン免疫沈降法により解析した。IDEF1は、多数のプロモーターのCATGC配列を含む領域に結合していたが、金属結合ドメインを欠失したIDEF1では結合量が低下していた。以上の結果から、IDEF1の金属結合ドメインはイネ体内においてシス配列との結合に重要であることが示された。
(2) 金属との結合状態が IDEF1 のタンパク質分解に与える影響の解析: IBP1 の発現を変化させた形質転換イネで IDEF1 の発現量を検定した。IDEF1 の発現量に明確な差は見られなかった。
(3) 鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析: HRZ と GFP との融合遺伝子を導入した形質転換イネで GFP の発現を調査した。完全長の HRZ を導入したイネでは導入タンパク質の発現は検出できなかったが、C末端側のドメインを欠失した HRZ を導入したイネでは発現が検出された。
(4) HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証:鉄硫黄クラスター合成・輸送に関わると期待されるタンパク質が HRZ と相互作用することを酵母 two-hybrid 法と pull-down 法により明らかにした。
(5) HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:酵母 two-hybrid 法とプロテオーム比較解析により、HRZ のユビキチン化基質タンパク質の候補を見いだした。HRZがジャスモン酸経路に関わる遺伝子の発現を制御することを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

(1) 金属との結合状態が IDEF1 の DNA 結合様式に与える影響の解析:クロマチン免疫沈降実験において、当初の予定に反し、結合活性が低く、十分に明確な結果が得られなかったため、研究費の繰越制度を適用し、新たにIDEF1-GFPの発現量を改善するために薬剤誘導性ベクターを用いて新規形質転換イネのコンストラクトおよびイネを作製した。このイネを用いて解析を行ったところ、結合活性が明確に検出され、翌年度(平成28年度)に当初の目的を達成することができた。
(2) 金属との結合状態が IDEF1 のタンパク質分解に与える影響の解析:おおむね予定通りに事件を行ったが、期待した結果は得られなかった。
(3) 鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析:ドメインに変異または欠失を導入した HRZ と GFP との融合遺伝子を導入したイネの多くは形質転換効率が低く、得られた形質転換体でも目的とするタンパク質の発現が検出できないものが多かった。
(4) HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証:おおむね順調に進展しているが、人手の制約により鉄硫黄クラスターの生化学的調査については後回しになっており、有効な実験系の構築に至らなかった。
(5) HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:おおむね予定通り進行している。

今後の研究の推進方策

(1) 金属との結合状態が IDEF1 の DNA 結合様式に与える影響の解析:薬剤誘導性IDEF1-GFP 発現イネを鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、鉄栄養条件がIDEF1 と DNA との結合に与える影響をクロマチン免疫沈降に続く定量的 PCR 法により詳細に解析する。
(2) 金属との結合状態が IDEF1 のタンパク質分解に与える影響の解析:IDEF1 タンパク質の安定性に影響を与える可能性がある HRZ および関連遺伝子の発現を変化させた形質転換イネを鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、ウエスタン解析により IDEF1 の発現量を検定する。
(3) 鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析:鉄結合ドメインに変異を導入した HRZ と GFP との融合遺伝子を発現する形質転換イネの作製を継続する。このイネを鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、共焦点レーザー顕微鏡で GFP を検鏡するとともにウエスタン解析を行う。また、鉄欠乏応答や鉄欠乏耐性を解析することにより、HRZ の金属結合状態と分解・細胞内局在との関連性を検討する。
(4) HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証:Glutaredoxin タンパク質の発現量を変化させた形質転換イネを作製する。このイネを鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、Glutaredoxin および HRZ タンパク質の発現量、鉄欠乏応答、鉄欠乏耐性を解析する。
(5) HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:標的タンパク質候補の発現量を変化させた形質転換イネの作製を継続する。これらについて、当該タンパク質の発現量、鉄欠乏応答や鉄欠乏耐性を検証する。in vitro 系によるユビキチン化反応の検証も続行する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] イネ鉄欠乏応答の初期にジャスモン酸経路が活性化される2016

    • 著者名/発表者名
      小林高範・板井玲子・瀬野浦武志・及川貴也・石丸泰寛・上田実・中西啓仁・西澤直子
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学(盛岡)
    • 年月日
      2016-03-20 – 2016-03-20
  • [学会発表] イネ鉄欠乏応答におけるユビキチンリガーゼHRZとジャスモン酸経路の関与2015

    • 著者名/発表者名
      小林高範・板井玲子・瀬野浦武志・及川貴也・石丸泰寛・上田実・中西啓仁・西澤直子
    • 学会等名
      日本土壌肥料学会2015年度京都大会
    • 発表場所
      京都大学(京都)
    • 年月日
      2015-09-10 – 2015-09-10

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公開日: 2018-01-16  

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