研究実績の概要 |
微生物の最小サイズは一般に0.2~0.3マイクロメートルとされ、自然科学の諸分野において孔径0.2マイクロメートルのフィルターを用いた濾過除菌が広く行われる。しかし、研究代表者らの先行研究により、系統的に新規な細菌がこのフィルターを通過することが明らかとなってきた。本研究では、これら濾過性細菌の持つ生物機能を多面的に調べる。平成27年度においては、「研究① 濾過性細菌の生理・生化学的性状の精査」と「研究② 濾過性細菌の遺伝子機能ポテンシャルの解明」の2つの課題を遂行した。研究①の結果として、国内土壌から分離した菌株IZ6の代謝基質の資化性や酵素活性に関するデータを取得した。また、その16S rRNA 遺伝子の塩基配列にもとづく分子系統解析より、本菌株がプロテオバクテリア門において新しい科を代表する新規分類群であることがわかった。そのため、新しい微生物系統を論文で公表するために必要な増殖特性や化学的性状(菌体脂肪酸組成・キノン・GC含量など)の分析にも取り掛かった。さらに、研究②においては、本菌株のゲノムDNA を抽出し、PacBioシークエンサーによるゲノム解読を行った。この結果によると、ゲノムサイズは約3.1Mbpと比較的小さく、そのうちタンパク質をコードする領域(CDS)は3,022個、また、タンパク質の合成に関わるrRNAオペロンは1個存在した。現在、遺伝子機能を推定するための生物情報解析を行っているところである。
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