研究課題
微生物の最小サイズは一般に0.2~0.3マイクロメートルとされ、自然科学の諸分野において孔径0.2マイクロメートルのフィルターを用いた濾過除菌が広く行われる。しかし、研究代表者らの先行研究により、系統的に新規な細菌がこのフィルターを通過することが明らかとなってきた。本研究では、これら濾過性細菌の持つ生物機能を多面的に調べる。平成28年度においては、昨年度に引き続き「研究① 濾過性細菌の生理・生化学的性状の精査」と「研究② 濾過性細菌の遺伝子機能ポテンシャルの解明」の2つの課題を遂行した。研究①としては、バイオログ社のオムニログシステムを活用し、サハラ砂漠産の濾過性細菌Oligoflexus tunisiensis Shr3Tの増殖特性や基質資化性・酵素活性に関するデータを網羅的に取得した。また、研究②においては、本細菌のゲノム情報を精査した。その結果によると、ゲノムサイズは約7.6 Mbpと比較的大きいことがわかった。ゲノム中には好気呼吸に関わる複数の末端酸化酵素や、異化型硝酸呼吸に関連する酵素をコードする機能遺伝子群が見いだされ、多様なエネルギー獲得機構を持つことが明らかとなった。加えて、多剤薬剤耐性に関わるRND 型異物排出システムをコードする領域も見られた。これらの結果を整理し、国際誌 Standards in Genomic Sciences で論文公表した。さらに、当初の計画に沿って、「研究③ 濾過性細菌群集の持つ生態学的機能の解明」の課題に関わる予備実験も実施した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、対象微生物の生理・生化学的性状を解明するとともに、その全ゲノム情報を論文公表することができた。そのため、進捗状況を「おおむね順調」と自己評価した。
今後も引き続き濾過性細菌の系統分類学的情報や生物機能情報に関するデータを収集する。なお、研究代表者の異動等によって完了できなかった一部の実験から優先的に取り掛かる予定である。研究を遂行する上での問題点はなく、実験計画などの大きな変更はない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Standards in Genomic Sciences
巻: 11 ページ: -
10.1186/s40793-016-0210-6
http://researchmap.jp/rnakai/